プレイリスト
いつも、書くときは気に入った唄をバックに流している。
偶然、内容と重なることがあって、入力しているサポーター(ヘルパー)さんと「また起きた」とシンクロニシティに顔を見あわせ、勢いづけられる。
ぼくにとって、とても大切なサポーターさんが年明けに大阪を離れる。
noteへの投稿にも楽しんで入力に携わってくれていただけではなく、「一人ひとりがどこかの部分ではマイノリティー」だという想いが響きあって、日々の生きにくさについてよく話した。
彼に背中を押されて、私小説に近いものを書きはじめた。
「いろいろと事情があって、なかなかほんとうのことが書けないのと違いますか?情景描写が独特だし、エッセイより小説がむいてると思うけどなぁ」
ぼくは引きこもりがちだし、気持ちの揺らぎが激しくなって、さっき考えていたことを忘れてしまうようになった。だから、短編でも無理だと考えていた。
でも、事あるごとに背中を押されつづけると、とうとうその気になって、一ヶ月ほどで書き上げるつもりでプロットもほとんどなしに、無謀な船出をしてしまった。
ただし、彼の念願だった濡れ場たっぷりの官能小説ではないけれど。
いったん、ほぼ書き上げたものの、青春ものにしてしまったから、ぼくの若いころの感覚といまの人たちの内面のズレがかみ合わなくて、何回か話しこんでいるうちに、抜き差しならない重いテーマを抱えることになった。
そうこうしているうちに、文字数は三万を越えそうになり、なんとしてもふたりで書き終えるとなると、時間との闘いになろうとしている。
一週間に一度のお昼のサポートは八時間ぐらい、そこにトイレや食事やときには外出や会議が入るから、ほんとうに焦っている。
ぎこちないストーリーでも、つたない言葉でも、ぼくの体験とまわりの人たちのさまざまをひとつの物語にまとめていきたい。
どちらにしても、ぼくらしく答えの出ないものにしたいと思う。
さて、すこしでもはかどるように、執筆中の音楽のプレイリストを組みかえた。
この秋に関取花さんの唄に出逢えたことは大きかった。
前にも書いたように、まっすぐに胸に届かないところがいい。
聴き取りやすさを追求した唄が多い中で、顔をしかめながら、身をよじりながら、激しい摩擦を体内のあちらこちらで起こしている感覚を味わいながら、ぼくは書くための支えにしてきた。
かなりの葛藤があって、脱皮するための助走があって、ある面でのそれまでの個性を捨てたのだろうから、他人には評価する資格はないだろう。
単に売れるためだけの変身ではなかったと信じたいから。
ただ、葛藤している花さんのリアルなライブに接してみたかった。
ただ、矛盾に引き裂かれそうになったぼくを救うのではなく、寄り添っていっしょに堕ちてくれたのは彼女の唄だった。
そのたびに、このままで終わらないことを確かめさせてくれた。
執筆用のプレイリストには、清志郎さんのJUMPとガガガSPの一本道が追加された。輝いている。
今夜はまったくの私的な内容になった。
こんな日があってもいい。