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支えあう①
今日のサポート(ぼくが使っているヘルパー派遣事業所では、介護をサポートと呼んでいる)が終わって、Aくんが「また来ますぅ」と言いながらぼくの視野から消えた。朝十時~夜七時まで、九時間のおつき合いだった。
その間、食事やトイレ以外にも、リハビリの先生から教わった身体のほぐしや夕方の通院につき添ってもらった。
もうすこし詳しく書けば、ベッドと車いすへの往復にはリフトを使っていて、身体を布でくるみ、機械で吊り上げ移動する。
それから、ぼくは全身の硬直が激しいので、しっかりと手足をベルトで固定して車いすに乗っている。そのセッティングがややこしい。
通院の行きは介護タクシーが予約できたけれど、帰りは片道三十分ほどをゆっくり歩いた。といっても、ぼくは電動車いすで。
そういえば、帰宅してから、着替えと全身を熱いお湯で拭いてもらった。
サポートの合間や通院の帰り道で、いろいろな話題に盛りあがった。
タイガースの佐藤くんフィーバーの理由や、共通の趣味の音楽について、コロナワクチンの接種や東京オリンピックについてと、それぞれの話で想いを伝えあった。
Aくんが帰ると、いつも幼いころの縁側での日向ぼっこをしたときみたいな気持ちになる。
春にはお昼前まで日ざしが届き、小さな庭にモンシロチョウやアゲハチョウやアシナガバチがやって来た。無造作に配置された大きな楕円形のふたつの石にはコケがうっすらと生えていて、たまにトカゲや小さなヘビが這っていた。
ぼくは、庭に落ちそうになるところまで「イモムシゴロゴロ」で転がって行き、生き物たちの動きに夢中になっていた。
気持ちの高ぶりと対照的に、身体はポカポカしていて、ちょっと刺激的で、ゆったりとした幸せな時間だった。
Aくんが帰ると、ちょっと刺激的で、ホッコリした気持ちになってから、「ありがとう」の言葉が胸のあたりに降りてくる。
脳が意識するという感覚ではなくて、体温が全身へとひろがっていくみたいに・・・。