ふわふわ
「前置きから入っていいですか?」
「ハイ、どうぞ!」
いま、この投稿を書きはじめようとしたら、なんだか幼いころにテレビにかじりついて見ていた吉本新喜劇の桑原和男さんのお馴染みの登場シーンが浮かんでしまった。
ぼくにとって、土曜のお昼のダントツのお楽しみだった。
さて、前置きというのは、ひょっとしたらおなじ内容をどこかで書いていた記憶があるような、ないような…?
こういうときだけ、「ヘルパーさんに聴き取ってもらいながら書くのは、なかなか手間がかかるんや…」などと障害を邪魔くさがりの隠れミノに使いたいところだ。
さて、一週間前から歯が痛くなって、食欲が湧いてこない。
軽い歯周病らしいので、丁寧な歯みがきがポイントみたいだ。
ということで、メニューにはさほど気を使わなくてもいいらしい。
ようやく、ここから本題に入る。
歯が痛くなると、柔らかいもののお世話にならなければならない。
今夜も山芋のとろろや納豆を用意してもらっている。
ところで、ぼくにはとっておきの簡単デザートがある。
名づけて「ふわふわコーヒーブレッド」だ。
厚切りの食パンをお好みにちぎって、タッパーに放りこんで、これまたお好みの甘さのコーヒーをぶっかけるだけ。
あっ、コーヒーはパンがヒタヒタになるぐらいにして、冷蔵庫でひと晩寝かせると出来あがり。
デザートと書いてしまったけれど、朝の起きたては歯が痛くなくても食欲が出ない。コレだけだと甘すぎるし、生野菜にドレッシングで活力が湧いてくるような気がする。
「ふわふわコーヒーブレッド」の発想の源は、子どものころの施設の朝食にさかのぼる。
小学生前後の年代の障害をもった子どもたちのほとんどは、キザミ食だったり、ミキサー食だったりしかノドを通ることができなかった。
朝から手間のかかる献立は難しいので、食パンを小さくちぎって砂糖の入ったミルクで煮た「パンがゆ」の毎日だった。
さすがに、毎日は飽きるといっても、こどもだから「甘いもの」はとてもうれしかった。
すこし大きめの一切れが口へ入ると、舌と上アゴでギュッと挟みこむ。
すると、甘いミルクがじんわりひろがった。
ある日、喫茶店でフレンチトーストを頬張っていて、なつかしい「パンがゆ」を思い出したのだった。
アレンジ好きのぼくは、居眠り防止の効果を期待してコーヒーに浸してみたのだった。
ブラックだともうひとつに思えて、微糖だと甘すぎる缶コーヒーもこうして使うと、ぼくにはほどよく味わうことができた。
これもどこかで書いたかもしれない。
「ふわふわコーヒーブレッド」の食感は、子どものころの施設で若いスタッフのおねえさんたちがよくおすそ分けしてくれた「ナガサキ屋のマシュマロ」を思い出させてくれる。
けっこう大きくて、口いっぱいに頬張るとやみつきになる弾力感だった。
「ナガサキ屋のマシュマロ」は、いまも手に入るのだろうか。
コワイ人もいたけど、ほとんどのおねえさんはやさしかった。
ぼくが還暦を過ぎたということは、おねえさんはおばあさんになっているのだろう。
急に会いたくなった。
実名は出さないことにしているから、北野天満宮のそばの施設だったことを書き残すことにする。
ぼくは元気です。