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ゲームで乗りきる
おトイレから食事までひとりでできないぼくの生活は、多くのヘルパーさんたちがシフトを組んで支えています。
日を増してコロナ感染が拡大する中、何とも言えない緊張感と重たい空気がひろがって、どうしても暗い気持ちになってしまいます。
お正月を過ぎるころまでは、ラジコのエリアフリーで地元の放送局を避けて聴くようにしたり、頭の中はコロナでいっぱいでも違う話題をしたり、ぼくなりの注意を払いながらも、表向きには触れないように心がけていました。
でも、ここまできてしまうと正確な情報も持っておきたいし、一人ひとりの考えを大切にしながらも、おたがいの身を守る方法については話しあうようにするなど、自然にふるまうようになりました。
とはいえ、ピリピリしているだけでは、精神的にしんどくなるばかりです。
そこで、日常のなにげない繰り返しをゲームに置き換えることを発見しました。
わが家の消耗品のひとつに使い捨て手袋があります。
ヘルパーさんの事業所から支給してもらっているのですが、およそ一カ月たらずのペースでひと箱分を使いきる感覚です。
ベテランヘルパーのHくんは、群を抜いて几帳面で、洗剤や調味料が残り少なくなると、必ずぼくに声をかけてくれます。
買い物に行くのはヘルパーさんでも、何を購入するかはぼくが決めてお願いしています。
ということで、年明けまでは使い捨て手袋も、Hくんの確認におまかせしていました。
ある日、ハッと気がつきました。Hくんの声かけにたよらず、ぼくが先に事業所への手配をしようと決めました。
あえて、彼にはこれまで通り、残りが少なくなれば声かけをお願いしています。
ゲームというのは、手袋が頃あいの枚数になるのを見はからって、ぼくが事業所へ先に手配できるかどうかを「心の中」で競うわけです。
頻繁に箱の中を確認したり、フライングぎみの手配をしたりすれば、それは反則になるわけです。
Hくんはわが家の生活を支える主力メンバーのひとりなので、こんなゲームを思いつきました。
電動車いすで街を走りまわっていたぼくは、「家」中心の生活スタイルに変わり、いまもストレスで精神的に不安定な状態になることもあります。
でも、これまで気づかなかった発見も、それなりにあることに微笑んでしまう瞬間もあります。
まわりの人たちに勧められても、面倒くさくて書き残すことを怠ってきました。
どんな状況になっても、どこかに光明をみつけていきたいものです。
(ちょっとカッコよすぎるエンディングかな?)