支えあう②
「車いすからベッドへの旅50」で登場したヘルパーAくんの話をふたたび。
Aくんはサポートに入っていた同世代の筋ジストロフィーの青年の死を通して、介護という仕事への向きあいかたが大きく変わったという。
お風呂の介助が多くて、湯上りにはコンビを組んだヘルパーさんと三人でゲームの話などに楽しい時間を過ごしていた。
同世代ということもあって、青年の明るい性格にも惹かれ、すこしでも彼の毎日の生活を充実させるために、力になりたいと思うようになっていく。
ひとり暮らしを視野に入れて準備をはじめたころ、青年の病状は進行して入院生活になる。
それでも、彼のポジティブさは変わらず、病室にひとりでパソコンが操作できるように、すこしでも自宅での生活スタイルに近づけるために、いろいろな工夫を重ねる。
Aくんは、仕事とアマチュア劇団の稽古の合間を縫って、青年が大好きだったゲームのキャラクターの絵をプレゼントするために、すこしずつ描き進めていたという。
いったん、回復した病状が急変して、青年は逝ってしまう。
「お葬式のときはとても悲しかったんですけど、会場から出たら何も考えられなくなって、何日間かはぼんやり過ごしました」
その後、Aくんは気づいたという。
「これまでぼくは、障害者の人たちの生活が充実するために自分が何ができるか、どんなふうに支援したらいいか、一生懸命に考えてきました」
Aくんからこの言葉を聴いたとき、ぼくは「どこが間違ってるんやろ?」と首をかしげたくなった。
彼はすこし間をおいて、話をつづけた。
「でもね、彼に会えなくなって、ぼくがどれだけ支えられてきたか、上から目線だったなぁって、思うようになったんです」
とても尊敬する人がいる。
彼女はいろいろな集まりの後、よくつぶやいている。
「たくさんの人に気持ちが届くのもうれしいけど、客席でひとりだけ真剣にうなづいてくれていたら、それだけですごくうれしいねんな」
ぼくもそんなときがある。
制度の枠組みが支援者と利用者になっている以上、「支えあう」関係づくりは無限大にむずかしいことかもしれない。
でも、いろいろな考えに耳を傾けながら、ブレずに暮らしていけたらと思う。