腰痛改善に正しい呼吸が重要な理由
脳は、それ以上動かしていると体が壊れてしまわないように、患部に「痛み」を感じさせて、それ以上患部を動かすのをやめさせるようにします。
しかし、足首の捻挫をしても歩かなければならないようなときなどは、びっこを引きながら歩きます。
必要な動作の場合は、痛みを感じる部分を使わないような方法で動作するようにします。
例えば、人差し指を怪我したときに、中指と親指でモノをつまんだり、虫歯で噛めないときに、逆側の歯で噛むなども、代わりの部分を使っての動作です。
しかし、このような本来使うべき部分ではない筋肉や関節を代わりに使う動作は、体に負担をかけることになります。
びっこを引きながら歩いていたら、腰が痛くなった。などはよく聞く話です。
呼吸だけは止めるな!
人の動作の中でもっとも大事なものは、歩くことでもなく、食べることでもなく呼吸することです。
呼吸が止まってしまえば死んでしまうからです。
そのため脳は、呼吸だけは止めないようにがんばります。
呼吸の種類
呼吸には、腹式呼吸と胸式呼吸があります。
腹式呼吸は横隔膜と腹横筋を使った呼吸です。
胸式呼吸は、外肋間筋と内肋間筋を使った呼吸です。
腹式呼吸と胸式呼吸はどちらがイイとか、悪いとかではなく、普段の呼吸であれば、割合は腹式7で胸式が3の7:3でおこなっています。
腰痛持ちの人は腹式呼吸が苦手です
脳は、腰に不具合があるとき痛みを出して動かすのをやめさせます。
同時に、多少動かしたくらいでは、腰椎がずれないように腰回りの筋肉を固くします。自前のコルセットです。
この自前のコルセット作る筋肉は、腹式呼吸で使う筋肉を含めた胴回りの筋肉です。
胴回りの筋肉が呼吸で使えなくなってしまうと、呼吸の割合の7:3の7が小さくなって、呼吸全体の値が小さくなってしまいます。
7+3で10で呼吸していたのが、仮に7が4になってしまったとしたら4+3で7で呼吸しなければならなくなってしまいます。
生命を維持するための呼吸が足りなくなってしまうと、死に近づいてしまいます。
脳は、胸式呼吸を頑張るように司令を出しますが、頑張っても腹式呼吸の分を補うことはできません。
そこで、普段は別の役目をしている筋肉に、呼吸を助けるように司令を出します。首の前や、胸や背中の筋肉などの呼吸補助筋と言われる筋肉たちです。
呼吸補助筋が使われる場面
呼吸補助筋は、本来は呼吸をするための筋肉ではありません。
姿勢を維持したり、動作をするための筋肉です。
100mを全力疾走したあとの呼吸は、肩を上下させて深く早い呼吸をしています。肩を上下させる筋肉を呼吸のために使っています。
1000mを全力疾走したあとは地面に倒れ込み、お腹も肩も胸も大きく動きます。そんなときは、立っているための筋肉も呼吸に使いたいので、地面に倒れ込みます。
腰痛持ちの人の場合は、スポーツの場合と違って、腹式呼吸ができないために呼吸補助筋が日常的に使われます。
呼吸補助筋は脳にとっては使いやすい筋肉です。
呼吸は浅くなりますが、素早く吸い込むことができるので、体力の落ちた病人も、呼吸補助筋を使って肩を上下させた呼吸をします。
右利きの人は、右手ばかりを使うように、使いやすい筋肉は一度使ってしまうと、使いづらい筋肉を使っての呼吸には戻ることができなくなってしまいます。
薪でご飯を炊くと美味しいと言われますが、炊飯器の便利さを知ってしまっている私達は、薪をカマドで燃やすなどの炊飯には戻ることができないのと似ているかもしれません。
呼吸補助筋を使った呼吸が定着してしまうと、本来の呼吸筋は衰えていきます。その状態が続くと、腰痛と関連が深い筋膜ラインの動きも悪くなってしまいます。体幹を安定させる自前のコルセットも筋力が落ちてしまいます。
慢性腰痛を改善するには、呼吸補助筋を使わない呼吸を取り戻す必要があります。