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【雑談材料】「アイリッシュマン」で始まること

マーティン・スコセッシ監督「アイリッシュマン」の内容に関してはいくらでも感想が出ているのでそちらを見ていただくとして、このNetflix配給&配信の映画が変えつつあることをまとめておきます。

まず、
日本を例にすると、長らく映画(洋画)の各ウィンドウ(メディア別利益回収順番)は以下のように決められていました。(作品、会社によってもちろん差はあります)

劇場公開→DVD・TVOD(半年後)→ペイテレビ(1年後)→テレビ放送・SVOD(約2年後)

無料で見られるテレビと、定額制のSVODは新鮮味が薄れた最後の商売。とにかく劇場が一番の川上で、SVOD、地上波放送は場末の叩き売りみたいなものでした。

それが「アイリッシュマン」の場合は、パラマウント、20世紀フォックス、ユニバーサルなどのメジャーを相手にNetflixが全世界配給権を約150億円で競り勝ちました。アメリカでは少数の劇場で公開、その後4週間で配信開始。
日本でも11/15に公開されましたが劇場は都内でアップリンク系2館と驚くほど少ない。配信開始は11/27と2週間後にスタート。
テレビCMではむしろNetflixでどうぞという感じでした。

マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ出演という映画中のバリバリ映画である「アイリッシュマン」が劇場公開2週間後に定額で見ることが出来ると言うのは、今までの長いギルド的商習慣からすると大革命です。

映画にとって映画館は映像体験の一つのジャンルに過ぎず、鮮度の高い一度目の宣伝の時点で、「劇場でも配信でも観やすいほうで見てください!」と言うのはシンプルで分かりやすい感じがします。

私も映画館で見る映画は好きです。
でも今は劇場が楽しくない。

昔は大作映画はスカラ系、もしくはルーブル、パンテオン、ミラノ(ルパミ古い!)という劇場と一体感があり、映画館に行くという事は、その作品の格も含めて体験することでした。

劇場のほとんどがシネコン化することにより、映画が劇場側の都合でかけられるようになっています。
それだけでなく、便利になるはずのシネコンがどんどん面倒くさくなってきているように思います。

観客は事前にネットでチケットをクレジットで買い(急な予定入るかもしれないのに)、不定期な上映時間を探し(日によって違うし)、動員予想だけで決められたサイズの部屋で(文芸作は公民館のような小部屋)、チラシ1枚張り出された部屋に入り(マンションの自治会か!)、座席指定されて(空いてるのに隣に人いるやん)、本編開始時間不明でポップコーンの宣伝見せられて(本編開始時間で書けよ)、隣の部屋の轟音が時折響く(携帯着信以上に迷惑)中で映画を見るしかない。
良い映画を見た後のロビーの高揚感もない。

感傷と言えば感傷だが、商売は顧客にとって便利な方、楽な方に流れているはずなのに、あまりに劇場利益優先の同業組合的な箱運用、番組編成になっては居ませんか?
地方の駅前からは映画館が消え、車を持ってない人は郊外のショッピングセンター横のシネコンに行くことが出来ない。
人生と向き合う映画を一人で見に行きたいと考える少数民は、DVDからペイテレビか配信に行くのは当然の流れのように思います。

劇場を守らないと日本の映画ビジネスが立ちいかなくなるという考え方もあると思いますが、シネコンと現在のビジネススキームで恩恵を被ってない映画も多数あることも事実です。
ゆっくり時間かけて回収する巨大映画と、一回の宣伝で全メディア一気に展開する小規模映画と2パターンあっていいと思います。

最後の「アイリッシュマン」の私の感想です。
マーティン・スコセッシ監督は映画館ではかからない3時間30分のゆったりしたテンポでマフィア達を描きたかったんだろうなと思いました。
登場するマフィア達はヒロイックな要素はなく、無理な葛藤やドラマを持ち込まない。エンタメフォーマットに乗っかっていない。だから「老人になっても人は変わらないなぁ、こういう人いるなぁ」とすごく近く感じます。
特にデ・ニーロ演じる主人公は次々に人を殺しますが、凄惨な印象もサスペンスもあまりありません。
「どうしたもんかなぁ」「困ったなぁ」「いやんなるなぁ」「なんでかなぁ」という表情が時折挟み込まれ、正しく生きること、人生ってものは難しさがじわっと感じられました。
山田洋次監督が「仁義なき戦い」を撮ったらこんな感じになるのかなぁと妄想しました。

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遊良カフカ
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