見出し画像

それでも…あらゆる事に挑戦したい理由

★以下のアドベントカレンダーの参加記事です。
他の皆さまの記事は、↓↓↓こちらでご確認下さい。
cluster民と開演する非公式 Advent Calendar 2024

数競争構造と求められる貢献度
正直、私にとってメタバースはプチ家出の場であり、現実世界の競争から逃れるための場所だった。けれど、今やclusterは数字の競争で溢れている。ワールドは訪問者数や「いいね」の数で評価され、アイテムは人気順で並び、イベントも「いいね」数や参加者数、同接数なんかで競い合っている。公式は「おすすめ」として特定のコンテンツをピックアップし、数値目標を達成すると「称号」を与える仕組みまで構築されている。

ランキングや数で競争を煽るだけではなく、cluster貢献度の表彰制度まで存在する。自薦も推薦依頼も可能で、ユーザー同士が推薦し合うこともあると聞く。これは相互作用を通じて忠誠心を醸成しているようにも見える。五人組や隣組といった歴史上の仕組みを思い出さずにはいられない。

最近では、一部のユーザーを選んで公式ステージに立たせるようにもなった。貢献度が高いと思われるユーザーが呼ばれている舞台だ。そんな公式イベントを盛り上げるかのように、ユーザーからの投げ銭が飛び交う。それを見ていると、忠誠心を高揚させるための集会を覗いてしまったような感覚に陥る事がある。想像を逞しくするなら、貢献度表彰や称号授与式、自己啓発セミナーや新興宗教の集会、果ては独裁国家の代表大会とか、そんな感じに似ていなくもない。

もちろん、これは私の想像の暴走だ。しかし、こうして振り返ってみると、clusterは管理主義が強いと言えるかもしれない。競争心を煽ることによってマネジメントされた組織で働かされているような錯覚を覚える瞬間が多々ある。この雰囲気は、組織の一歯車として働くことに慣れた日本人には馴染み深いものだろう。しかし、俯瞰して考えてみると、我々は被雇用者ではなく顧客であり、お金を支払っている側である。そして、顧客とはビジネスコンプライアンスの下で公平に扱われるべき存在だ。

こんな風に貢献度や忠誠心を煽らなくても、特典付き有料アカウントを作れば良いのにと思う。例えば、1アカウントで同時にアバターを2つ存在できるようにすれば、1つをスピーカーにしてVRでサブ音声を使う際の「口が動かない問題」をスタッフ登録者を増やさずに解決できる。同時に2つのイベントに参加して、友人への義理を果たせる。アバター収納庫を200に増やせるようになれば、本当に有難い。…などなど。私以外にも、X(旧Twitter)のプレミアム年間料金くらいは出す人が多いんじゃなかろうか?


辺境の管理主義国家
私がclusterを始めた2年前は、「引きこもりを加速する」というキャッチコピーのもと、弱者が試行錯誤することが許される緩さが心地よかった。しかし、先日の公式説明会を見た限りでは、cluster社はVtuber系のコンサート会場としての方向性に活路を見出しているように感じる。成果主義が嫌でメタバースに引きこもっている人も多いと思われる中で、clusterは「引きこもりに優しい世界」ではなくなり、創業者がかつて語った「逃げ場」としての姿からも遠ざかっていくだろう。

一方で、cluster内での経済活動が進んでいることは良いことだと思う。しかし、外国人ユーザーはその活動に参加できず、蚊帳の外に置かれている。彼らは仕方なく、自分のBoothリンクをワールド内に置き、仮設のショップを運営している状況だ。それを解決しないままで長期間運営されている現状は、ユーザー間の不平等を産んでいる。こうしたことも理由の一つかもしれないが、私が英語系イベントを休止してclusterから離れている間に、外国人ユーザーの数は激減してしまった。

もし、cluster社とcluster民をひとつの国家と考えた場合、division, noncompliance, inequality… といったネガティブな要素が目立つ国家と言っていい。しかも、ホリデーシーズンのロビーには“Merry Christmas”の文字が掲げられていた(なぜ問題かは“めたとりっぷ12月号”私の記事を参照のこと)。意図したわけではないのは分かっているが、国際社会から見たら、まるで辺境の管理主義国家のようである。

こうした状況で、私自身も以前のように国際交流イベントを開催したり、他のメタバースから外国人を誘って来て楽しむ意欲は薄れてきた。実際、日本人グループに単独で飛び込む事を厭わない人を除けば、気軽に楽しみたい外国人ユーザーは他を選びつつある。


「何者かになること」を求められるプレッシャー
それでも、ショービズの世界を手軽に体験できる点は素晴らしいと思う。運営もその方向性に舵を切ったようだ。プロデビューを目指す人や、活動の場を求めるVtuber、プロデューサー、そして気軽にエンタメを楽しみたい観客にとっては理想的な場所だ。ワールドやアイテムといったクリエイターにとっても良い環境だと思う。

だが、そのメインストリームから外れている人達はどうだろう。運営会社の方向性によって、「何者かになる」ことを求められるプレッシャーが全体的に高まっている気がする。結局、行動力がある人や貪欲に取り組む人が成功者となる構図は、現実世界とほとんど変わらない。それどころか、現実世界でも最も厳しいであろうショービズ界の競争を、否応なしに見せつけられ、それに巻き込まれ、煽られてしまっている。その雰囲気が生み出す強迫観念に、遠火の強火でチリチリと炙られてる気がしてならない。

そのうえ、clusterは人脈が一番ものをいう。多くの人もそう書いている。営業や宣伝が功を奏す世界で、引きこもりや逃避型人間が上手く世渡りするのは至難の業だ。人付き合いが苦手で、ワールド巡りも一人プライベート、Xのいいねやリプもマメにできない私のような人間が、数を追いかけるために無理をしたら自分自身が潰れてしまう。リアルからの逃げ場としての楽しむための場所で、そんな無理もしたくない。


それでも…あらゆる事に挑戦したい理由
そんな風に思うなら、clusterから出ていけばいいと言われそうだ。でも、私がまだclusterにいる理由は、素敵なユーザーがいるからだ。周りに振り回されずに、自分の方向性に向かって自己研鑽を続けるユーザーたち。その知識と労力を惜しみなく後進に還元する事を厭わない人々。彼らを敬愛し、同等には成り得なくても、彼らの前で少しでも輝いていたい。そのために、私も自分を磨き続けたいという思いは、なかなか消えない。

私のバケットリスト(やりたいことリスト)は、そのためにある。これを達成することで、cluster内で市民権を得られる最低ラインを自分なりに設定している。まずはそのスタートラインに立つことが目下の目標だ。これまで、言語+国際交流イベントを40回以上主催、めたとりっぷ記者、アバタースタイリスト、通訳、MC、歌唱などに挑戦してきた。来年の目標は、Unityを使ったワールド制作とBlenderの習得だ。それを達成すれば、苦手な営業や宣伝をしなくても、Trusted Userとして認識されるのではないかと、私は勝手に思い込んでいる。

実は、私が共感している言葉がある。ソクラテスの『無知の知』だ。詳しくは検索してほしいが、簡単に言えば、「自分を過大評価する人ほど実際の能力は低く、逆に本当に能力のある人ほど謙虚である」という考え方だ。能力のある人は、俯瞰して自分の立ち位置を把握できるため、自分やその周辺の“不足”を自覚している。この自己認識(メタ認知)こそが成長の鍵になる。そんな哲学だ。

実際、私の憧れる人達は能力がありながら皆さん謙虚である。一方で、実力よりも遥かに自信に満ちた人も時々見かける。そういう人に限って距離感を考えずに押しかけて自分を売り込み、何の衒いもなく他人を利用して自分自身の益に繋げようとする。何人かのそうした人々に悩まされた経験があるので、彼らは私にとって強烈な反面教師だ。だからこそ、私は黙して自己研鑽に励みたい。そして、嘘をつくことや嵩上げすること、自分の利益を最優先にする事を、恥と考えている。もっとも、これは営業や宣伝が苦手な自分への言い訳かもしれないが…。

私は私のやり方で進みたいし、結局それしかできない。よくよく考えれば、現実の競争に疲れた私が求めるのは「逃げ場」ではなく「様々な挑戦を可能にしてくれる場」だったのかも知れない。そういう場としてはclusterというプラットフォームはとても有難い。その管理主義や貢献度煽り気質もあり、数で示せるような私の忠誠心は薄いかもしれないけれど、低リスクで挑戦でき、その手応えを肌で感じられる場として、clusterは本当に貴重な環境だ。そして、上述の素敵な人たちから刺激を得たり、人と協力し合える喜びを得られる大切な場所でもある。その環境を提供して下さっていること対して、cluster社には心から感謝を申し上げたい。ありがとうございます。

Emilia’s Holiday Season Outfit
Emilia in Holiday Season Outfit

Emilia’s Vroid Hub : https://hub.vroid.com/users/1914841

cluster情報月刊誌 “めたとりっぷ”広告

いいなと思ったら応援しよう!