とりが鳴いていたの
上司との小一時間のオンライン面談を終えて
最後に一言「あの、○○ちゃん
おうちでインコか何か飼っているの?」
家を空けることが多いし、我が家にはもちろん動物はいない。
初夏の風の通る日だったため、窓を思い切り開けていたのだが
近所を飛び回るとりたちのお声が
思いがけず電話にも終始参加していたらしい。
わたしが緊張しつつ話している間も
先輩はとりのお声が気になっていたのね..。
「植物ならかってるんですけどね、動物は..」と紡ぎながら
ちょっと気の抜けた空気でふたり笑って面談解散。
その日、九州の母と電話をした。
「面談の終わりに、とりを飼ってるのかって訊かれたの」と言うと
「東京って、とり!多いよね!」と
ボリュームの上がった声で妙に嬉しそうなリアクションが返って来る。
母もかつてはトウキョーに住んでいた。
「自然を残そうとして大きい公園が多くあるからなのか、渡り鳥の通り道なのかなんなのかさ〜、この辺りより多い気がするっちゃんね。」と続ける母。
彼女がこの街に暮らしたのは
30年、40年近く昔のおはなし。
わたしの今の年齢の頃も、ここにいたんだなー。
当時住んでいた寮もなくなってしまったそうだし、
お店や町並みももちろんすっかり変わってしまって、
共感出来るトウキョーは私たちの中には少ない。
バブルの頃のトウキョーを20代で過ごすなんて
楽しかったでしょうと言ってみても
彼女の性格上、そういうものでもないようだったし
携帯電話もネットもない当時、大都会で暮らすのは大変だっただろうとも想像する。
古い建築物が好きなわたしが
以前、青山で通りすがりに或るアパートに見惚れた。
母に写真を送ると一瞬でどこか分かってくれた。
その時以来。こうしてふたりの間でトウキョーがリンクしたのは。
嬉しいものなんだ。
お母さんも、同じ街にいたんだなあって。
ひとりだけど、ひとりじゃない。
些細なことから、そんな感覚を贈られる。
とりが鳴いていたのよって
ただの、それだけの、おはなしでした。
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