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「子どものわくわくを知りたい親は 私だけではないはず!」 想いが地域に伝わり つながっていくまで

わくわくして動き出さずにはいられない原動力「わくわくエンジン®」を持って活動している方たちを紹介する連載「わくわくエンジン図鑑」。
認定NPO法人キーパーソン21がお届けします。

今回登場するのは、理事の直江麻衣子(まいてぃ)さん。3人の小中学生の母でもある まいてぃさんは、お住まいの地域で、子どものわくわくエンジンを引き出す活動を広げています。その名も「有明わくわくプロジェクト」!活動を始めたきっかけ、そして想いを形にするまでの道のりとは?

【図鑑No.19】
お名前
 
直江麻衣子(まいてぃ)
お仕事 
・小中学校英語指導者として、小学生に英語の音やリズムを面白く伝え、できたことをたくさん認めることで、挑戦していく気持ちを高めること
・転職したい人の経験や希望に寄り添い、挑戦しやすい機会を整えること
わくわくエンジン
異文化を超え、人と人とを結びつけ喜ばれ、自分の役割や意味を感じること

仕事をやめて海外で出産
帰国後 モヤモヤが始まった! 

今振りかえると、私は子育てするまで、自分のことについてモヤモヤすることはあまりなかったのかもしれません。やりたいこと、わくわくすることを明確に意識していたわけではないのですが、興味のあるものや目の前のことに取り組み、それが次につながっていく、そんな経験を重ねていきました。

ところが、仕事をやめて、夫の海外駐在先で二人出産し、帰国後に専業主婦になった頃からモヤモヤを抱えるようになりました。子育てをする中で、日本での親として、妻として、女性としての家族と子どもとの向き合い方に試行錯誤がはじまりました。

特に子育ては「自分の子であっても自分自身とは違うし、それが子どもの魅力であり、違いを見つけるのが子育ての醍醐味だ!」と自分に言い聞かせる一方、子どもに怒ったり、いらいらしたりは人並み以上!

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「英語学習」や、「21世紀に必要な力」など、教育キーワードにおどらされるのも違和感がありました。駐在先のフランスの女性たちが、自分を強く持つ姿に触発されていた私は、不安があれば行動して解消する、自分の目で確認しにいくタイプになっていました。子どもの英語学習を探す中で、自分自身が小学校英語指導者の資格をとったのも、この現れだったと思います。

一生懸命でした。 

そんな試行錯誤をする中で出会ったのが、キーパーソン21でした。英語指導者の資格のほかに、キャリアカウンセラーの資格も習得していたのですが、キャリアカウンセラーは、継続学習と呼ばれる資格更新のための学習が必要です。どこで何を学ぼうか探す中で、「小中高校生向けのキャリア教育をしている」キーパーソン21に興味を持ちました。

これからの子どもたちには、自分たちの時代とは異なる能力や資質が必要だといわれる中で、教育の現場はどうなっているのかを知りたい、また、当時は幼児や小学生だった自分の子どもたちが進んでいく先を見ておくことで、育児のヒントにもつながればと考えていました。

”利己的に”掘り下げて発見した わくわくエンジン

最初に「すきなものビンゴ&お仕事マップ」を体験した時、実はわくわくエンジンの深掘りがうまくいきませんでした。出てきたわくわくエンジンは”全人類みな兄弟”的なもの、まるで政治家の言葉のようで違和感がありました

ただ、その後、もっと利己的に掘り下げていくと、

異文化を超え、人と人とを結びつけ喜ばれ、自分の役割や意味を感じること

になり、確かに!と腹落ちしました。

「異文化」とは日本と海外の文化という意味にとどまりません。
例えば、子どもたちが通っていた保育園と幼稚園では、保護者の方の価値観に異なる点がありました。また学校と企業の間でも、物事の進め方や専門領域に違いがあります。

両者の違いを理解したうえで介在し、それぞれの想いをつなぐことに自分の存在意義を感じていました。そして介在するには、噂話や人から聞いた話だけではやはり熱がない。自分の目で確認することが必要で、それが自分の行動力につながっていたのだと納得しました。

「すきなものビンゴ&お仕事マップ」を子どもの通う小学校で実施したい

わくわくエンジンを発見して、“自分を知る”感覚に納得感があったので、わが子3人のことも理解したい、引き出してみたいと思いました。3人のわくわくエンジンがどれだけ違うのか、どんなサポートがあれば、よりいきいきと生きていけるのか、それがわかれば確信をもって子育てができるのではないか、と考えたのです。

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「子どものことが知りたい親は、きっと私だけではないはず!」という思いも原動力となりました。当時、キーパーソン21の会員として月1回のペースで小中学校に「すきなものビンゴ&お仕事マップ」を届けに行っており、子どもたちの楽しそうな様子を見ていたので、プログラムの面白さにも自信がありました。
そして2017年、キーパーソン21が経済産業省主催の第7回キャリア教育アワードにおいて、なんと最優秀賞(中小企業の部)を受賞!国のお墨つきもいただいたことと、息子が6年生という対象学年であったタイミングが重なり、思いきって校長先生に学校での実施を提案してみました。

とはいえ、突然校長先生を訪ねて提案できたわけではありません。提案の2年前から、地域の教育の場に関わりたいという思いから、まずは学校を知らないとだめだよなぁ、、、と恐る恐る学級委員やPTA活動をはじめていました。子どもたちのために通学路の交通安全ルールを作ったり、運動会の見守りなどを行ったり。日々の活動を通して、学校や周囲の保護者との信頼関係を築けていたことで、話を聞いてもらいやすかったのではないかと思います。

校長先生は、プログラムの趣旨にご賛同くださり、ついに実施が決定!ところが、その2か月後、校長先生が異動になられてしまいます。これで振り出しに戻ったかに思えたのですが、実は、後任の校長先生にもこのプログラム実施はしっかりと引継ぎがされていたのです。こうして念願の「すきなものビンゴ&お仕事マップ」を実施できることになりました。

保護者が参加して作り上げる特別なプログラム
「有明わくわくプロジェクト」の誕生!

プログラムは、PTA主催の「学年イベント」の時間に行うことになりました。学校での実施にあたり、キーパーソン21での実施とは違う形でのチャレンジをしました。それは、保護者にもプログラムに参加してもらうこと

通常、学校の子どもたちへプログラムを届けるとき、キーパーソン21に関心をもって会員になり、わくわくエンジンを引き出すための講座を受けた方が参加します。児童3人に対して1人の大人がついてサポートするのです。このサポート役をPTAの学級委員と本部役員、総勢10名以上の保護者にお願いすることにしました。

保護者からは「上手に引き出しができるだろうか」という不安の声も上がりましたが、事前に授業サポーター研修も行い、準備を進めました。自分の子どもの引き出し役は担当しないということ、子どもから引き出した声は不用意に第三者に広めたりしないことは、十分に認識合わせをしておきました。

保護者による「すきなものビンゴ&お仕事マップ」の実施は大成功!
終了後は、へとへとで抜け殻のようになりましたが、参加した保護者からは

「関われてよかった」
「核家族化が進み、親以外の会話のできる地域の大人の大切さを実感した」
「わくわくエンジンを知ってから、仕事や家庭での声かけが変わった」
「今まで、これを知らなかったのは損をしていたと思う」

などの嬉しい声が寄せられ、本当にホッとしました。

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このプログラムには、当時小学6年生だった長男も参加していました。長男の感想は

あんな本気な大人たちに会ったら こっちも心を動かさざるを得ない

そんなことを言ってくれるものかと、感動して泣きそうでした。子どもたちへのアンケートでも、「保護者たちが来てくれて嬉しかった」という声が90%以上にものぼっていました。大人たち、特に地域のお父さんやお母さんが、「いぇーい」と元気に教室に入ってきて、一緒にゲームを楽しんでくれる。「どうして?」「なんで?」と自分たちの関心のあることを真剣にきいて受け止めてくれる。さらに将来を考えるヒントをくれる。

大人たちが全身で子どもたちに向き合うこと、これが子どもたちにとってかけがえのない経験になったのだと感じました。

2年目は、学校カリキュラムの都合で学年イベントは中止になってしまったのですが、同じ地区の新設校に異動された元6年生担任の先生からお声がけをいただき、幸運にも新設校で「総合的学習の時間」の授業として存続が決まります。「有明わくわくプロジェクト」と名付けたこのプロジェクトは、経験した保護者の方が、新たに関心を抱いた保護者や在勤者へ想いを伝える形で2年目、3年目と受け継がれています。

そしてコロナの影響下にもかかわらず、4年目も文通方式に形を変え近隣の2校でプログラムの実施をすることになっています。

プログラムを実施・継続する過程では、校長先生の異動や学校カリキュラムの変更など、予定通りにいかないことは様々ありました。それでも、「有明わくわくプロジェクト」は地域に根づき広がり続けています。自分の想いが学校や保護者に伝わり、子どもたちがそれを感謝の気持ちで受け止め、笑顔が連鎖していく様子にプロジェクトの意義を感じています。今年からはPTA改め地域学校協働本部のコーディネーターとして、役に立てることがあるか、模索を続けています。

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子どものありのままを受け止めれば 伴走の仕方が見えてくる

うちの子どもたちには、何度かわくわくエンジンの引き出しをしています。「あー、やっぱりそうか」と思うこともあれば、「普段、あまり言わなくてもちゃんと考えているんだな」という気づきがあったり。

改めて感じるのは、親に必要なのは、数字や一般論のエビテンスではなくて、意訳していない子どもの言葉そのものなのだということです。親があってほしい姿を追うのではなく、「今はそういう現状か」と子どものありのままを受け止めること。そうすることで、子どもへの伴走の仕方がわかってくるし、ジタバタしたり余計な不安を増やさずに子どもを放っておけると思うのです。ただの放任ではなく、親が根拠を持っているからこそできることです。

子どもにとっても、ありのままの自分を受け入れ、認めてもらうことが自己肯定感を高め、何よりも支えになるのだと思います。
自分自身を振り返ってみても、親の影響力は何歳になっても絶大で、親子関係はまるで太陽と地球のよう。今でも70代の親が自分を認めてくれる言葉は温かく、何よりも自信とエネルギーの源になっていると感じます。置き換えて考えるとわが子にとっては私が太陽。私の言動が子どもに大きく作用することを忘れずに、子どもの現状を否定せず、これからも向き合っていきたいと思います。

わくわくの先にある次のステップまでサポートしたい

活動を続けてきて、次に取り組んでいきたいことが2つでてきました。

1つ目は、わくわくエンジンを知ることの大切さや、「有明わくわくプロジェクト」の事例を伝えていくことで、より多くの親が確信をもって子育てをするためのサポートをすること。

2つ目は、わくわくエンジンを引き出した後、それを定期的にアップデートする場を作ることです。わくわくエンジンは、今の自分を知るためのカルテのようなものだと思います。知ればそれで終わり、というものではなくて、もし定期的にメンテナンスすることができれば、行動がはじまりわくわくの原動力も増大します。

経済産業省は、ワクワクを核に「知る」と「創る」が循環する学びの形(学びのSTEAM化)を目指す姿として位置づけています。

図1

※経済産業省「未来の教室 ~learning innovation~」より引用

核となるワクワク=わくわくエンジンの引き出しが得意なのが、わたしたちキーパーソン21です。わたしたちが「知る」や「創る」機会を提供できる企業や社会人グループと協力し合うことで、引き出したわくわくエンジンを次の行動のステップにつなげることができます。行動した先で、創ったり、知ったりしたことを振り返って、わくわくエンジンを再度言語化する。そのメンテナンスをする場や機会が、学校や地域、家庭で気軽に多くあればいいなと、と思っています。より多くの子どもたちが「自分の軸」をもって、磨いて成長できるように、サポートしていきたいと思います。

(編集後記)
PTAを巻き込んだり、校長先生に提案したり・・・思いついてすぐにできることではありません。実際、まいてぃさんも恐る恐るPTA活動に参加してからプログラムの提案まで、実に2年!でも、今日からできるファーストステップがあります。それは、学校現場をもっと知ること。まいてぃさんは、校長先生にプログラム実施を提案に行く際、事前に校長先生の学校経営グランドデザインにまで目を通していたそうです。
校長先生の計画書?そういうものがあるんだ!
私も遅まきながら、子どもの小学校のWEBサイトをのぞいてみました。振り返ってみると、子どもの学校のことなのに、どこか他人事のようにしか関心を持ってこなかったなあと反省。身のまわりのことに自分事として向き合っていくことから始めてみようと思いました。
まいてぃさんの想いがつまった「有明わくわくプロジェクト」の様子はキーパーソン21のWEBサイトでもご覧いただけます。こちらもぜひ。
(ライター・ズーミン)


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