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もう誰も信じられない!って人ほど、ヒッチハイクをするべきだ

突然ですが、みなさんはヒッチハイクにどんな印象をお持ちでしょうか?

『ヒッチハイク』という行為は賛否両論あると思います。

「迷惑」「非常識」「ヒッチハイクを装った詐欺もいるんでしょ?」などなど、マイナスなイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。


実際、私の夫はヒッチハイクに良い印象を持っておらず、

「ヒッチハイクなんて、他人の善意に甘えてるだけでしょ」

「震災直後に、泥かきボランティアの人と喋るのが楽しいからって、わざと自分の庭に泥撒いてるようなもんだ」

と言っていました。(そこまで言うか!笑)


夫のようにヒッチハイクに対して良い印象を持っていない人がすぐ側にいたおかげで、多様な価値観や考え方を知ることができました。


ヒッチハイクにマイナスイメージを持っている方を否定するつもりはありません。
価値観や考え方は人それぞれです。

世の中の全員に、ヒッチハイクを強要したいとは微塵も思っていません。



だけど、ヒッチハイクで日本中旅した元ヒッチハイカーとして、声を大にして言いたい。

ヒッチハイク、最高だよ!!!


この記事では、私がヒッチハイクの経験を通して感じた魅力をお伝えしたいと思います。

ヒッチハイクに挑戦してみたい方、はたまた、ヒッチハイカーを乗せてみたい方など、ヒッチハイクに興味関心のある方の参考になれば幸いです。

一期一会の連続、日常生活では決してあり得ない出会いと経験


ヒッチハイクの一番の魅力は、なんと言っても『人との出会い』です。

今まで、100台以上の車に乗せていただき、数百人の方々に出会いました。

免許を取り立ての若者から、80代のおじいちゃん、家族連れ、カップル、サラリーマン、トラックの運転手に、国体に出場するサッカー選手集団、中には現役の探偵まで!

普通に生活していたら、絶対に出会うことのない方々です。

そんな方々と、車内という密室で、数十分から数時間、長い時だと10時間以上、ひたすら会話するなんて経験、ヒッチハイク以外でなかなかできません。


しかも、ヒッチハイクの面白いところが『偶然』の連続だということ。

「本当は新幹線で行くつもりだったけど、今朝、急遽車で行くことになった」

「本当はこのサービスエリアに寄るつもりがなかったんだけど、こどもがトイレに行きたいって言うから立ち寄ったの」

「本当は1時間前に家を出なきゃいけなかったんだけど、寝坊しちゃって」

など、予定通りいかなかったからこそ乗せることができた、と言ってくれる方が本当に多かったです。


そして、そういう方々は口を揃えて、

「新幹線じゃなく車で来たのは」
「このサービスエリアに立ち寄ったのは」
「寝坊しちゃったのは」

『みぃやに会うためだったんだね』と言ってくれるんです…!(まじで)


逆も然りで、

私も、本当は東名高速にのりたかったのに間違えて中央道に乗ってしまった時などは、

「あ!この人に会うために、道を間違えたのか!」

というような出会いが待っていたりします。


『この道を通らなかったら』
『5分時間がずれていたら』

もう一生出会うことがなかったであろう人と一緒に同じ時間を過ごせる。

まさに一期一会の連続です。


これでもか!と降り注ぐ 優しさや思いやりのシャワー

ヒッチハイクをしていると、乗せてくださる方はもちろん、本当に、本当に多くの方からの優しさや思いやりを受け取ることができます。

 サービスエリアでスケッチブックを掲げていると、
「ごめんな、乗せてやれないけど」と言って、コーヒーやジュース、カイロなどの差し入れをいただいたことなんて数え切れないですし、

乗せていただいた方にも、乗せていただくだけでもありがたいことなのに、
ごはんまでご馳走になったり、おうちに泊めていただいたり、

「仲間に紹介したい!」と言って、行きつけの小料理屋さんを貸切っての歓迎会を開催していただいたこともあります。


私は中学生の時になんやかんやあって、人間不信になりました。

でも、旅をするようになって、たくさんの出会いを経験して、素晴らしい人がたくさんいることを知って、私の人間不信も少しずつなくなっていきました。


それでも、初めてのヒッチハイクは本当に怖かった。

ヒッチハイクをすると決めてからは、毎日ドキドキして、出発前夜は不安で一睡もできませんでした。

「危ない人の車に乗ってしまったら、殺されてしまうかもしれない」と、嫌な想像ばかりがわいてきて。


でも、蓋を開けてみれば、もう本当に感動の連続で。

「人ってなんてあたたかいんだろう」

「なんで、見ず知らずの私にここまで優しくしてくれるんだろう」

そう、何度も何度も感じました。


学生時代の私は、世の中腐ってると思っていました。
とにかく楽しいことばかりを考えるようにしていても、言葉では書き表せない、ドロドロの感情がいつも胸の奥にありました。


でも、自分の見てきた世界がいかに狭かったのか、旅やヒッチハイクを通して痛感しました。


世の中には、間違いなく他人を傷つける人もいます。

悲しいけど、毎日毎日いろんな犯罪や事件、いじめ、虐待などが起きているのも事実。

それでも、ヒッチハイクをして、この世界には『良い人』の方がはるかに多いと身をもって感じることができました。


もし、昔の私のように、誰かに傷つけられて「もう他人なんて信じられない」と思っている人がこの記事を読んでいてくれたなら、あなたに伝えたい。


大丈夫、この世界には良い人の方がはるかに多いよ!

想像以上に世界は優しさで溢れてるよー!!

あなたを傷つけた人が、1人なのか、10人なのか、100人なのかわからないけど、
この地球には80億人の人がいるねんで! 日本だけでも1億人以上!!


今、死んでしまいたいくらいつらかったとしても、どうか、勇気を出して今いる環境を飛び出してほしい。

もし、もうちょっと勇気が出せそうなら旅に出てほしい。

今までの人生をぶっ壊してくれるくらい、すてきな出会いや経験が待っています。


たくさんの優しさや思いやりに触れることができたら、
今度は私が、他の人や世の中に優しさや思いやりの気持ちを還元していきたい!という気持ちが強くなりました。

そうやって、『優しさ』や『思いやり』が循環して、この世界がもっともっとすてきなものになれば良いなと、本気で願っています。


もう一生会わないかもしれないからこそ、こぼれる本音


ヒッチハイクをして、車に乗せていただいている間、基本的にはずっとお喋りしています。

 若者集団の車の場合、

「あいのりの新メンバーかと思ったわ!」
「猿岩石時代の生き残り?!」 (今の若い子、知ってる?笑)
などのお決まりトークから始まり、終始ハイテンションでわいわい盛り上がってお別れというパターンも少なくなかったのですが、

トラックの運転手さんや、サラリーマンの方、もちろん女性でも、1名で運転している方の車に乗せていただいた時は、ゆったりまったりじっくり会話することが多いです。


そんな時、今後もう一生会うこともないかもしれないという特異な関係がそうさせるのかもしれないですが、
家族や恋人、友人には話したことがない、話せないという話をしてくれる方が、本当に多くいらっしゃいました。


私の父親くらいの年齢の方に乗せていただいた時、1時間ほど経ってから、

「実は、君と同い年くらいの娘がいてね。今からその娘に会いに行くんだけど。
 娘が小学生の時に離婚してから一度も会っていないんだ。
 やっと会えることになったけど、今更どんな顔をして、どんな話をすればいいんだろう。」

と話してくれました。

なんて言えば良いのかわからなかったですが、ただひたすらお話を聞き、最終的には娘さん役になって、何度もいろんなパターンのシミュレーションを行いました。


別れ際、男性は
「君に会っていなかったら、娘の姿を見て逃げ出していたかもしれない。
 今なら、笑顔で娘に会える気がするよ。君に会えて本当に良かった。」

と言ってくれました。




京都から東京まで長時間乗せていただいた男性は、とってもひょうきんで明るくて、お話が面白くて、何より会話の節々に優しさが溢れていました。

静岡に入り、もうあと2〜3時間で着くかな、というところで、
「実はね、俺、在日なんだ。」と話してくれました。


幼少期は、在日朝鮮人ということで壮絶ないじめにあったということ、
その経験から、周りに自分が在日であることがバレるのがとてつもなく怖いということ、

そして、今、婚約している彼女がいるけど、彼女の両親に結婚を猛反対されているということ。


つらい過去や、今現在苦しんでいることすら、明るく面白おかしく話す男性に、
「なんで、そんな状況でも笑っていられるんですか?」と聞きました。

すると、その男性は、

「泣き喚いても怒鳴り散らしても、俺が在日であることは変わらないでしょ?
 どうせ変えることができないなら、笑っていた方がいいじゃない。

 それにね。俺が悪態ついていたら、『在日』に対する印象が今以上に悪くなってしまうかもしれない。
 でも、在日の俺がいい奴だったら、『在日』の印象を良くすることもできるかもしれないでしょ?」

と、笑いながら話してくれました。


男性の、溢れんばかりの優しさは、今までたくさんたくさん傷つけられて、それを乗り越えてきたからこその優しさなんだなと感じました。


当時の私は、『在日朝鮮人』という言葉は知っていても、理解できてはいなかったですが、

ただ一つ言えるのは、

その男性は、日本人とか在日朝鮮人とか一切関係なく、一人の人間として、とても素晴らしい方だったということです。
そういった事実も、ヒッチハイクをしていなかったら気付けなかったかもしれません。

あれから10年以上経ちますが、男性が無事彼女さんと結婚し、すてきな日々を過ごしていることをただただ祈っています。


与えてもらってばかりなのに、「天使に出会ってしまった…!」と感謝される不思議


ヒッチハイクに対するマイナスイメージの一つが、他人に依存しすぎている点やと思います。

確かに、普通だったら、車を買って、ガソリンを入れて、高速料金を払ってお出かけするところを、

見ず知らずの人に無償で乗せていただき、時にはご飯までご馳走になったり、泊めていただいたりするヒッチハイクは、一見すると寄生虫のような厄介な存在に見えるかもしれません。

事実、そのように感じている方々もいらっしゃると思います。


私も、ヒッチハイクを始めた頃は、
「与えてもらってばかりでいいんやろうか」と考えたこともあります。


しかし、初めてのヒッチハイクで九州を一周した時、
長崎で乗せてもらった男性との出会いで、私のヒッチハイクに対する概念が大きく変わりました。


50代中頃のその男性は、終始不機嫌そうで会話も続かず、車内の空気は重たかったのですが、
私の「今からどこへ行くんですか?」という質問を皮切りに、

東京で働いていて、出張で長崎へ来たこと、
今から東京へ帰ること、
そして、東京へ帰ったら今月いっぱいでリストラされるのが決まっていることを話してくれました。


その後は、
65歳まで雇うって契約だったのに裏切られた、
今まで数十年会社に尽くしてきたのに…
上司も部下も同僚も、まともな奴がいない、
など、会社へのありとあらゆる不満を漏らしていました。


私は、最初はただただ話を聞くことしかできなかったのですが、

たまたま、私の知人に、リストラされたことを機に、山を購入しにそこに日本庭園を作った方や、50代前半で早期退職し0からスタートして竹炭の第一人者になった方がいたので、

その方々の話をしたり、「これはチャンスですよ!」「これを機に、今までやりたかったけどできなかったことに挑戦してみましょ!」と、必死でエールを送りました。


その男性は、涙をこぼしながら、「そうだな、そうだな…」と頷き、黙ってしまいました。


二十歳そこそこの若造が、えらそうなことを言ってしまったと後悔していると、

「リストラを告げられてから、自分の周り全てが敵だと思った。
 全てに憎しみを感じ、毎日イライラして、体調も崩して、妻とも喧嘩ばかりで。

俺の人生、もう終わったんだと思った。

 でも、そうか、これはチャンスなんだね。
 終わりじゃなくて、スタートなんだ。会社に縛られず、やりたいことをやっていいんだ…!
 第二の人生、思いっきり楽しむよ。 ありがとう、本当にありがとう…!」

と言ってくれました。
そのあとは、二人で車の中で泣きました。



別れ際、

「普段だったら絶対ヒッチハイクなんて乗せないんだけど、今日は何故か乗せる気になったんだ。

 乗せて本当に良かった。君に会えて良かった。

 天使に出会ってしまった。

 本当にありがとう。」

という言葉を私にくれました。


その経験があってから、もしかしたら、与えてもらってばかりのヒッチハイクでも、私にも何か与えることができるのかもしれない、と感じるようになりました。


だからこそ、乗せてくださった方に楽しんでもらえるように、
時には、話し相手として聞き役に徹するように努めました。

その思いがドライバーの皆さんに通じていたのかはわからないですが、
別れ際には、ほぼ100%の確率で、「楽しかったよ、ありがとう!」という言葉をくださるのです。

「ありがとう」はこちらのセリフなのに。


車を降りてすぐ、「次はいつ車に乗ってくれるのーーー」と大泣きしながら電話をくれた男の子もいます。

お母さんは、「みぃやを下ろした直後からギャン泣きで、電話してってうるさくて…ごめんね」と言っていましたが、
私は涙が出るほど嬉しかったのを、今でもはっきりと覚えています。


ヒッチハイクは、与えてもらってばっかりです。
他人の善意なくしては成り得ません。


勘違いしてはいけないのは、ヒッチハイクをすることは何もすごいことではありません。

すごいのは乗せてくださる方々です。

乗せてくださる方々の、『優しさ』や『思いやりの心』がすごいんです。


でも、与えてもらってばかりのヒッチハイカーにもできることはあるはずです。

私は、ヒッチハイクは一種のエンターテインメントやと思っています。

乗せてくださった方に、「乗せて良かった!」と思ってもらえるようなヒッチハイクじゃないといけません。


もし、ほんの少しでも『楽しい!』と思ってもらえたのなら、
長時間運転の暇つぶし相手にでもなれたのなら、
溜め込んだストレスの捌け口になれたのなら、
ほんの少し、ほんの少しでも心が楽になったのなら、

『与えてもらってばっかり』のヒッチハイクが、形を変える気がしています。



ヒッチハイクに興味のある方は、是非挑戦してみてください。(安全の保証はできませんが…!)

普通の生活では、決してできない出会いや経験があなたを待っています。


そして、最後にはなりますが、
今まで私を含むヒッチハイカーを乗せてくださった皆様、
本当に本当にありがとうございます!!


最後まで読んでくださりありがとうございます。 ほんの少しでも、あなたの心に響いていたら嬉しいです。