仮想通貨の現在と未来 | 久保田大海
宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネルにて放送中)の書き起こしをお届けします。3月26日に放送されたvol.28のテーマは「仮想通貨の現在と未来」。CoinDesk Japan編集長の久保田大海さんをゲストに迎え、投機対象としてのブームが過ぎ去ったかに見える仮想通貨に、今、どのような動きがあるのか。トークンエコノミーによる活用の可能性や、ブロックチェーン技術が象徴する時代的潮流について議論しました。(構成:佐藤雄)
NewsX vol.28 「仮想通貨の現在と未来」
2019年3月26日放送
ゲスト:久保田大海(CoinDesk Japan編集長)
アシスタント:加藤るみ
1ビットコイン225万円のピーク、90億流出事件……「激動の3年間」を経た仮想通貨のこれから
加藤 NewsX火曜日、今日のゲストは編集者でCoinDesk Japan編集長の久保田大海さんです。よろしくお願いいたします。久保田さんと宇野さんはどういったきっかけでお知り合いになられたんですか?
久保田 僕は以前出版社に勤めていました。初めて作った『ゲーミフィケーション』という本がありまして、著者がゲーム研究者の井上明人という方なんですね。あとから知ったんですが、井上さんがPLANETSに原稿を書いていたんです。
宇野 井上明人くんはPLANETSによく書いてくれている僕の仕事仲間で、彼の最初の本を作ったのが、この久保田さん。そういったつながりなんですよ。
加藤 そして「CoinDesk Japan」というのは?
久保田 仮想通貨とブロックチェーン、このふたつの領域を扱うメディアです。名前に「Japan」と付いていているんですが、アメリカが本国のサイトになります。アメリカでは数百万人の読者をもつ大きなサイトで、また毎年ニューヨーク市と組んで「Blockchain Week」っていうイベントをやっています。その中でもCoindeskが主催する「Consensus」というカンファレンスが世界で一番集客する仮想通貨関連のイベントになっています。日本版はちょうど2019年3月創刊したばかりのサイトになるんですけど、創刊特集で日本でブロックチェーンや仮想通貨に縁のある方々、慶応大学の坂井豊貴先生、家入一真さん、このあいだ『ニムロッド』で芥川賞をとった上田岳弘さん、面白法人カヤックCEOの柳澤大輔さん、孫泰蔵さん、LINEの出澤剛CEOとかいろいろな方に登場していただいています。仮想通貨やブロックチェーンって遠い存在だと思うんですけど、近い未来このテクノロジーがどう経済や社会を変えていくのか、という点にフォーカスしたメディアですので、こういった方々に未来を語っていただいただきました。
加藤 そして今日のテーマがこちらです。「仮想通貨の現在と未来」です。
宇野 去年や一昨年くらいに仮想通貨関連ってすごくいろいろなことがあった。それがちょうど一段落したタイミングではあると思うんだよね。だからこのタイミングで投機対象うんぬんということは横においといて、仮想通貨とその背景にあるブロックチェーンが僕らが生きてるくらいの近未来に、どういったインパクトをもたらす可能性が高いのかを改めて議論したいと思います。
加藤 では最初のキーワードにいきましょう。キーワード①「激動の3年間」です。
宇野 この3年間ですごく状況が動いた。この3年間の流れを整理することによって、逆に今の仮想通貨の状況をまるごと整理できると思う。その整理をお願いしたうえで後半の議論に入っていきたいと思っています。
久保田 早速ですがスライドを使ってざっとこの3年間を説明していきたいと思います。
久保田 まず価格のピークだったのは忘れもしない2017年12月17日。1ビットコインが225万円という凄まじい価格がついてました。今は40万円ちょっと(※価格は放送当時)の価格がついていて、痛い目をみた人もたくさん居るだろうと思います。そのときの時価総額は世界一の小売業者であるウォルマートと同じくらいの規模まで膨らんでいました。
久保田 日本仮想通貨交換協会が発表してる統計がありまして、去年の12月に発表されたものです。平成30年12月次の月間の取引高が7千7百億円弱になります。証拠金取引高という、いわゆるレバレッジをかけて取引していた額が8兆4千億円となりまして、これが投機的と言われる由縁なのかなと思います。外国為替市場もまったく同じだと思うんですけど、ゲーム的な感覚で取引してる人が多いことを示す統計なんじゃないかと思います。
久保田 こちらみなさん記憶にあるかと思うんですが、去年2018年1月にCoincheckで680億円という非常に大きな金額が流出したわけですね。そのあと2018年9月にも70億近くの流出がありました。このあたりで仮想通貨は怖いってことが一気に社会に流布したようなタイミングでした。同時にこれをもとに金融庁がどういうルールを設定していったら良いのかという議論が進んだ1年でもありました。
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