宇野常寛『観光しない京都』 第3回 カフェをめぐりながら仕事をする/路地散歩から、「世界の真実」へ【不定期配信】
本誌・編集長の宇野常寛に連載『観光しない京都』。今回は、京都での午後をのんびり過ごしたいときの、おすすめの散策ルートのご案内。ノートパソコンと本を片手に、町家カフェで堪能する珈琲と甘味。古都の町並みに点在する、よりすぐりお店をご紹介します。 ※前回の記事はこちら。
市川屋珈琲のフルーツサンド
京都に足を運ぶときはほぼほぼ大学の講義があるときなのですが、僕の担当授業は午前中いっぱいで終わるので午後からは街中に出ます。前回述べたように僕は仕事柄ノートパソコンさえあればほとんどの仕事ができるので、京都にいる間は基本的に街をぶらぶらしながら、適当なカフェに入って仕事をしています。京都には個性的なカフェがたくさんあるので仕事をする場所には事欠きません。
僕がこの1年くらいお気に入りなのは、渋谷通東大路(京都に詳しくない人のために説明すると、これは座標です。グーグルマップに入力してみてください)近くの市川屋珈琲【1】、雑誌の京都特集でもたまに出てくる町家カフェです。
町家カフェというと街のお弁当屋さんとか、クリーニング屋さんのような奥に長細い空間にカウンターがあってアイロン台のようなテーブルが2、3席、といったどちらかといえばこじんまりとしたお店も多いのですが、この市川屋珈琲というお店は町家カフェの中ではとても大きくて、たぶん小さな郵便局くらいの広さがあります。なんでも、以前この建物は清水焼(この渋谷東大路という座標は、焼き物屋が集まる五条坂の近くです)の工房だったらしく、普通の町家より大きい、ということらしいです。
このゆったりとした空間のせいか、このお店は異様に居心地がよく、つい長居してしまいます。
このお店にある電源は入って左奥のテーブルの二人席のみなのですが、僕のお気に入りは圧倒的にカウンターです。そこで手際よく店主のおじさんと若いスタッフたちが、コーヒーを淹れ、フルーツをカットしているさまを見ながら書きものをして過ごすのが好きです。
店主のおじさんは物静かな人ですが、いつもニコニコしていてなんだか見ているだけで癒やされます。話しかけると気さくにお店のことを教えてくれます。
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