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【Q&A】排煙上別建物(愛知県)

全ての地域にある訳ではないのですが、建築基準関係規定を補完するものとして「建築基準法取扱基準」を出している行政庁が多々あります。都内であれば新宿区や葛飾区、足立区、また2022年3月1日に練馬区が基準を出し、かなりの厳しさに業界をざわつかせたことが記憶に新しいところ。千葉県や大阪府、札幌市など全国各地に基準を出しております。

ここで注意したのは、これら「建築基準法取扱基準」はかなり地域差がある取扱であるということです。全国各地で設計されている方は、比較的これら基準を網羅的に把握しているかもしれませんが、ある特定の地域に特化して設計されている設計者の方が、日ごろやり慣れない地域で設計をする場合、これら基準を見逃し大きな手戻りが発覚している事態を何度も見てきております。

まず日頃やり慣れない地域で設計する場合は、「建築基準法取扱基準」があるかをしっかり確認しましょう、大体ホームページ等を駆使すれば検索できますし、それら基準をまとめた書籍も販売されております。

1つ例として、愛知県の「愛知県建築基準法関係例規集」の1項目を紹介したいと思います。何故、愛知県かというとかなり関東圏とは異なっており、理にかなっているのですが、拡大解釈感があり中々用いることに抵抗感を頂いてしまうからです。


排煙設備の取扱なのですが、ざっくり書きますと法第126条の2第1項では

①法別表第1(い)欄(1)~(4)項特殊建築物で延べ面積が500㎡を超えるもの、②階数が3以上で延べ面積が500㎡を超える建築物、
③排煙無窓居室又は延べ面積が1000㎡を超える建築物の居室で、その床面積が200㎡を超えるものには、

排煙設備を設けなければならない。
法第126条の2第2項で排煙上の別棟が規定されており、これもざっくり書きますと
防火区画され、開口部が遮煙性能を有した防火設備等(遮煙区画)で区画されていれば、排煙上別建物とみなしてよい、
ということになります。

一般的な解釈ですと、「建築設備設計・施工上の運用指針」にもあるようにこれら2項の排煙上別棟区画は増築等のための遡及適用の救済規定であるため、これら規定を適用しないという考え方かと思います。

しかし愛知県はこれを許容します。

愛知県建築基準法関係例規集[平成29年版]抜粋

上記取扱に記載されているように、法第126条の2第2項の排煙上は別棟の考え方は増築だけでなく、新築も適用可能という記載があります。この取り扱いによれば500㎡ごとに遮煙区画されていれば、法第126条の2第1項に関しては別建物として扱われるということになります。

イメージとしては各階500㎡のホテルが10階建であろうと、階ごとに遮煙区画されていれば、排煙設備の規定はかからないということになるかと思います。もちろん排煙無窓検討は必要かと思いますが。

ただしこの考え方は条文上は正しいのではないかと思っています。
平成30年の既存ストック活用のパブコメの回答では、

Q:排煙上別棟の基準(令第126 条の2)は、増改築のみに適用が可能である旨を明確化してほしい。
A:ご指摘のあった基準は、新築か増改築かにかかわらず適用することが可能な基準です。

とあり、新築の排煙上の別棟を許容してます。

では、全国的にこの考えを用いることが出来るかと言えば正直何とも言えません。確かに法文からを読めると思えるのですが、さっき上げた例のように「各階が500㎡以下の平面形状であれば積層されても階段などは竪穴区画され、どのみち遮煙区画される」ので多くの建築物が排煙設備が不要な建築物になってしまいます。

そう考えると、この解釈は妥当なのか、、
謎は深まるばかりです。

ちなみに愛知県の取り扱いはこれ以外にも関東圏やその他地域と異なるものが多いです。ですので愛知県で設計を慣れている方がその他の地域で設計を行うと考え方が違うところに直面するケースがあるかもしれませんので、ご注意ください。

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