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【Q&A】特定防火設備に不燃材料のカッティングシートで装飾することはできるのか。

ある大型工場にある食堂部分の開口部の話です。
その開口部が面積区画ライン上にあるため特定防火設備になってしまい、その開口部に不燃材料のカッティングシートで装飾できるのか、というご質問についての考察方法を記事にしました。

特定防火設備は告示品と大臣認定品にざっくり区分けすることが出来ます。
まず告示品から考察することにします。

特定防火設備の告示を確認

特定防火設備の構造を規定している告示は、告示第1369号です。
第一に構造、第二に周囲について、第三に取付方法について記載されておりますが、意外に盲点なのが第二の規定されている内容です。

第二 第一第五号又は第六号のいずれかに該当する防火設備は、周囲の部分(当該防火設備から屋内側に十五センチメートル以内の間に設けられた建具がある場合には、当該建具を含む。)が不燃材料で造られた開口部に取り付けなければならない。

告示1369号より

周囲の部分、また当該建具の15cm以内の建具は不燃材料とする、という制限が設けられています。昔は内側に障子等がついている場合があり、不燃材要求がかかったり、また工場ですと2重に建具があり、それがポリカーボネートであったため、このように告示に抵触するような話もありました。

今回のご質問直接該当する規定はありませでしたが、とりあえず不燃材料であれば、多少の制限はクリアできそうです。

『建築物の防火避難規定の解説』の確認

次に、このような防火系の問題があるときに最も活用される書籍は、『建築物の防火避難規定の解説』です。

上記書籍に「耐火構造の外壁に木材、外断熱材等を施す場合の取り扱い」について書かれているページがあります。そこに耐火構造の外壁や軒裏に木材等の可燃材料を貼るは、構造に必要な性能を損ねないと判断できる程度であれば支障なし、という取り扱いが記述されております。

関連して『建築物の防火避難規定の解説』の後半部分に記述されているQ&Aでは「防火設備の構造方法を定めている平成12年建告第1360号及び1369号に例示されている防火設備に、木等を可燃物を貼ることが可能か」という質問に対し「できない」という回答も出ておりました。

ここで分かることは告示品の特定防火設備に木材等の可燃物は貼ることはできない、という事まで分かりました。

次に大臣認定品について考察します。

大臣認定品の特定防火設備について

大臣認定品はその認定書に添付されている構造にて材料実験等をおこない既定の性能を有しているということを証明するという考え方ですので、認定書を逸脱した改変を行うことは原則不可能です。

認定書から逸脱する場合は下記のようなやりとりがよくあります。
指定確認検査機関は「認定書通り施工してください」
メーカーは「指定確認検査機関に聞いてください」
となり、堂々巡りとなり答えが出ません。

考察と結果

「特定防火設備に不燃材のカッティングシートで装飾できるのか」という問いに関しては、明瞭な資料等はありませんでした。

しかし、一連の考察をもって指定確認検査機関と協議しました。
指定確認検査機関側も「OK or NG」と問われれば、必ずしも「OK」とは言えない。しかし設計者として下記のように考えているのであれば「NG」とも言えない、という回答となりました。

①可燃物ではなく、不燃材料のカッティングシートを張る
②容易にはがすことができる、家具相当と考えられるのではないか

このように建築物を新築であれ、増築であれ、改修であれ、すべてを建築基準法等の法規でジャッジするということはできない、ということが分かります。その時に以下に客観的にその事象について説明できるか、どの程度のリスクがあるか等を判断し選択をする必要があります。

すべてを指定確認検査機関等に聞き、ジャッジしてもらうという手もありますが、このような判断できないような項目についてはNGと言われがちです。
(もちろん確認申請が伴わない項目は原則回答してもらえないでしょう)

そこを如何に考えることができるか、ということも法規マネジメントが行える価値提供の1つかと思います。

ちなみに「特定防火設備に不燃材のカッティングシートで装飾できるのか」の判断も指定確認検査機関や特定行政庁でも意見が分かれることもあると思いますので、すべてがすべて可能という訳ではありませんので、必要に応じ協議を行ってください。

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