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【2022/04|法改正】省エネ化対策に伴う建築基準法等も含んだ法律の改正案が閣議決定されました

令和4年4月22日に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案」を閣議決定されました。上記のカッコ書きも見ても分かるように、何の法律が改正されるのかが分かりにくいので、ざっくり要約したい思います。改正案ということですので、詳細等は未決定。ただ、知って損がない情報かと思います。

この記事の詳細情報は下記国土交通省のリンクを参照として下さい。

背景

ざっくり言えば、日本政府が2050年までに温室効果ガスの排出を全体として「0」にするカーボンニュートラルを実現するためです。そのためエネルギー消費の約3割を占める建築分野での省エネ対策を加速させる、またそれに合わせて、CO2の吸収源対策として建築分野での木材利用を促進させるのため、ということが今回の法改正の意図となります。

カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」を意味するのですが、そのあたりの概要や国の取組は環境省の「脱炭素ポータル」というサイトが非常に分かり分かり易くまとまっておりますので、気になる方は参照してください。

改正案の概要

改正案は2つの大枠に区分されているようです。1つ目は「省エネ対策の加速」、2つ目めは木材利用の促進です。具体的な内容を国土交通省のホームページより引用しますと、

(1) 省エネ対策の加速
 [1] 省エネ性能の底上げ・より高い省エネ性能への誘導
  ‐ 全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務付け
  ‐ トップランナー制度(大手事業者による段階的な性能向上)の拡充
  ‐ 販売・賃貸時における省エネ性能表示の推進

 [2] ストックの省エネ改修や再エネ設備の導入促進
  ‐ 住宅の省エネ改修に対する住宅金融支援機構による低利融資制度を創設
  ‐ 市町村が定める再エネ利用促進区域内について、建築士から建築主へ再エネ設備の導入
        効果の説明義務を導入
  ‐ 省エネ改修や再エネ設備の導入に支障となる高さ制限等の合理化

(2) 木材利用の促進
 [1] 防火規制の合理化
  ‐ 大規模建築物について、大断面材を活用した建築物全体の木造化や、防火区画を活用した部分的な木造化を可能とする
  ‐ 防火規制上、別棟扱いを認め、低層部分の木造化を可能に

 [2] 構造規制の合理化
  ‐ 二級建築士でも行える簡易な構造計算で建築可能な3階建て木造建築物の範囲の拡大 等

また補足資料としまして、国土交通省の概要資料を添付します。

国土交通省HP|「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案」概要より

これら資料を見ても分かるようにし、省エネに関する制度や手続きや制度が改正されるということ。また建築基準法等に関しては、木造利用に関する部分が改正されることがメインであるという事が分かります。

建築基準法や確認申請に伴う改正概要

ここからは、私が特に気にしております「建築基準法や確認申請に伴う改正概要」について特に注目している内容を取り上げていこうと思います。ただし国土交通省が掲載している新旧対照条文しか情報源がないため、私が分かる範囲の範疇に限定されてしまうことをご了承願います。また原文を読まれたり方は、新旧対照条文はこちらから確認が可能です。
見ても頂くて分かるのですが、非常にボリュームがあります。特に省エネ法に関してはかなり変更されてますので、読むのに気合が必要です。

では、私が注視している項目は下記の通りです。

・建築基準法(以下法)第28条 (居室の採光及び換気)
現行では住宅は「その居室の床面積1/7以上」、という書き方をしているが改正案では「居室の種類に応じて」という書き方に変更されています。これが緩和よりなのか、強化よりなのか分からないのですが、既成の幅がもたされたということは確かだと思います。

・容積率・建蔽率・高さ等の集団規定
法文が整理され、又許認可による緩和が追加されています。

・法第2条 九の二 (耐火建築物)
「特定主要構造部」という新たなる概念により再整理されております。防耐火の更なる複雑化が予測されます。

・法第6条 (建築物の建築等に関する申請及び確認)
いわゆる確認の特例を受けることが出来る4号建築の範囲の見直しとなります。具体的には木造建築物の4号建築物にならない範囲が強化されます。

現行法「木造の建築物で3以上の階数を有し、又は延べ面積が500平方メートル、高さが13メートル若しくは軒の高さが9メートルを超えるもの」
                ⇩
改正案「建築物で2以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超えるもの」

となり、S造やRC造と考え方が同じとなります。また大規模修繕・模様替えも木2でも対象になるでは?、という事も気がかり項目です。

・法20条 (構造耐力)
木造の建築物の法改正に伴うルートの整理。

・法21条(大規模の建築物の主要構造部等)
「特定主要構造部」という新たなる概念により再整理、また別棟規定の新設。

・法26条(防火壁等)
「特定主要構造部」という新たなる概念により再整理。

・法27条(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)
「特定主要構造部」という新たなる概念により再整理、また別棟規定の新設。

・その他
全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務付け、
二級建築士でも行える簡易な構造計算で建築可能な3階建て木造建築物の範囲の拡大

新旧対照条文を見て頂くと分かるかと思うのですが、改正内容は多岐に渡ります。現状公表されているのは法律のみです。法律だけでは全貌がわからないため、今後政令・省令として改正案が整えられていくのかと思います。

平成30年の法改正のように大々的に説明会等おこなわれていく気もしますが、このような閣議決定後、政令発表まで長期化することもありますので気長に待ちながら、情報収集していこうと思います。

以上、お読みいただき有難うございました。


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