工場の遵法化について
「建築基準法に特化したコンサルティング」を行っていると既存の建物に関する相談もけっこう多くあります。特に多いキーワードは「遵法化」です。
検査済証のない建物、違反してしまっている建築物等の「遵法化」は専門としている設計事務所もあり、国交省の既存ストック建築物の促進とした相次ぐ法改正、スクラップビルドからの脱却等から考えるとニーズがあるというよりも、建設業の1つのカテゴリーに分類されたなと感じます。
これら既存建物の「遵法化」の中で特に「工場」がご相談が多い用途の1つとしてあげられます。何故、工場の案件が多いのか等をざっくり考察してみると、
①そもそも検査済証の取得率が低かった、②社内体制、③コンプライアンス
の3つの理由があげられます。
ではこの3つについて説明致します。
『そもそも検査済証の取得率が低かった』について
まず図1をご覧ください。このグラフは少し古いですが完了検査件数の推移をあらわしたものです。平成28年の部分を見てみると受験率は9割です。1割も本当に受検していないの?と疑いたくなるぐらい、建築する⇒確認済証を取得⇒完了検査が一般化したと思います。では確認申請業務が民営化された平成12年を見てみると受験率は6~7割、平成10年時では5割をきっていたということが分かります。
ということは、平成10年以前に建設された建築物の半数は検査済証が未取得。加え、このグラフ検査済交付件数を確認件数で除して作成されているため、そもそも確認申請を行わずして建設された建物はカウントされていませんので、さらに多くの所定の手続きを行っていない既存建物が存在しているかもしれません。
これは工場に限った話ではありませんが、既存建物の多くは完了検査等の所定の手続きをしていない(=手続き違反)建築物に該当している可能性があるということです。
工場は高度成長期に多くが建設されました。今も現役として稼働している工場もあり、多くの工場が更新の時期を迎えつつあります。しかしながら、ご説明したように建設時期によってはかなりの確率で「確認申請は取得しているんだが、検査済証が取得されていない」や「確認申請すら行わず増築してしまった」、というケースが非常に多くあり、建替えや更新プロジェクトの障壁になってます。
『社内体制』について
これは組織的な話かと思いますが、端的にいうならば『社内に建築のプロフェショナルが不在』ということが上げられます。その工場が何かしらを生産するのであれば、その生産機器のプロフェショナルは社内にいるのですが、建築のプロフェショナルが不在であるため、例えばスペースが狭くなったので拡大したいとすれば、地場の施工者等にその建設のみを依頼し、建築的な遵法性を担保せず増築をしてしまう、ということが本当よくあります。
大手の会社であれば自社で一級建築士がいる場合がありますが、なかなかそこまで人材が確保できないケースもあります。この建築プロフェショナルとその他企業との協同は今後必要になってくるのではないでしょうか。
『コンプライアンス』について
これは『今まで何十年も稼働し、なぜ今更費用をかけて遵法化しなければならないのか?』、という工場現場サイドから質問されそうな内容ですが、よくある理由についてです。
これは時代の風潮・企業のスタンスなのかもしれませんが、『コンプライアンス(=法令順守)』のために遵法化を企業として行うということ上げられます。もちろん前提としては人命、安全、安心等は内包され、ひっくるめて法令遵守を目指します。
このコンプライアンスというワードは2000年代から「コンプライアンス経営」のように聞くようになってきたかと思います。特に昨今では、M&A等の投資の分野でもその企業の価値をコンプライアンスという尺度で測ったり、また既存建物をER(エンジニアリングレポート)によって法令順守されているかを確認することが当たり前にようになってきております。
高度成長期に建設されたような工場でもコンプライアンスにより遵法化が求められています。
終わりに
工場と遵法化というキーワードで書いてきましたが、要するに「時代として所定の手続きを行われていな工場は多く存在し、時代として遵法化が求められており、建築のプロフェショナルが必要とされている」ということかなと思っております。
このような遵法化が必要な工場をどのように遵法化してよいか分からない企業さんが多くいるかと思います。次回はこれらプロジェクトの進め方について書きたいなと思います。
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