【Q&A】都内で31mを超える共同住宅を設計する場合のざっくり注意点
建築基準法で31mという高さがちょこちょこ出てきます。なんて半端な数字なんだ、覚えにくいという感想をもった設計者さんも多いはず。
建築基準法が制定される以前は建築物は「市街地建築物法」という法律で制限されておりました。その頃は尺貫法が採用されており、その当時から絶対高さ制限が設けられており、住居地域では65尺、それ以外地域では100尺が高さ制限として規定されておりました。実は、この規定地が現行法の基準に採用されているのです。65尺=約20m、100尺=約31mと換算されると見慣れた値になります。
1920年に施行された「市街地建築物法」、1950年に公布された「建築物基準法」の一連の流れに歴史を感じます。
というのは全て余談です。
今回は未だマンション価格が高騰と続け、共同住宅のヴォリュームスタディを行っている設計事務所も多いはず。ということで、「31m」というキーワードでかかる建築基準法がらみの注意点をご紹介していきます。
①非常用エレベーターについて
まず31mと聞いてピンとくるの非常用エレベーターの設置の有無です。施行令第129条の13の2 「非常用の昇降機の設置を要しない建築物」に規定がありますが、31mを超える部分の面積、階数によって免除方法が異なります。
ここで14階建てにするか、15階建てにするかの分かれるポイントにもなります。上記三号を活用して免除する場合には高さ31mを超える階数が4以下とする必要があります。よく悩んでしまうのがその31mのラインが階の途中階にある場合です。防火避難規定の解説によると、「地盤面からの31mのラインが当該階の床面とその上階の床面との中間の位置より下の場合は、当該階は高さ31mを超える部分の階に含まれるもの」として扱う(下記図参照)、とありますので平均地盤面の算定も重要となります。
15階建てになると特別避難階段
15階建てになると直通階段に特別避難階段要求が発生します。令122条よる100㎡区画をすることにより、緩和することも出来ますがこの区画方法についても防火避難規定に取り扱いがあったり、指定確認検査機関等によっても解釈が違う点がありますので要注意です。
特別避難階段になると附室設置が必要になり、附室を自然排煙としたい場合、延焼の恐れのある部分内には排煙窓を設置することができないので、狭小敷地であると、機械排煙という選択となりコストに影響を及ぼすことになります。
2直は必要?
2つの直通階段が必要かどうかについては直接31mとキーワードには関連しないのですが、避難規定というところで影響するので念のためお伝えします。令121条をざっくりかいつまむと、
共同住宅で階数が6以上の場合、原則2直が必要。その階の居室の面積が200㎡(耐火建築物前提)を越えず、避難上有効なBAL+屋外避難階段or特別避難階段の場合は1直とすることが可能。
ここで注意なのですが、令122条より5階以上の階に通じる直通階段は避難階段要求が生じます。100㎡区画をすることにより緩和することもできるのですが、2直を上記で1直に緩和している場合は、令122条の100㎡区画による避難階段緩和を行うことはできません。
東京都建築安全条例第11条
ここまでは建築基準法の範疇ですので、全国概ね同じなのですが、東京都場合は「東京都建築安全条例」が該当します。そこで忘れてはならないのは第11条です。
この条項は規定された特殊建築物に該当するものなので、共同住宅にかぎったものではないです。ゆえに忘れやすい。規定の内容は詳細は本文に譲りますが31mを超える場合、直通階段のうち1つは特別避難階段とし、またその他は屋外避難階段にするというものです。これも所定の防火区画で緩和することも可能ですが、直通階段が屋内避難階段(開放廊下に接続したもの)or屋外避難階段に制限されてしまします。
ここで何が注意点かというと、建築基準法だけなのであれば、
・2直の階段を設置
・100㎡区画を行い、避難階段緩和
ということが成立するのですが、東京都の場合高さが31mを超えた場合は、
避難階段等を緩和することができないのです。
特に東京都の共同住宅は都案17条の主要な出入口の規定にも、直接影響を与える項目なので、見逃してしまうとかなり手戻りしてしまいます。
ざっくり注意点を書きました。
この「ざっくり」シリーズはかなり部分的に切り取ってますので、法的根拠としてではなく、読み物としてお楽しみください。
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