抜けない法チェック方法について② ~敷地調査編~
前回、(といっても2か月もあいだがあいてしまいました。)
「元確認検査員が教える_ワクコエテ流_抜けない法チェック方法について① ~プロセス編~」で紹介いたしました、私が確認機関で担当として行っていた審査手順
1)敷地の調査→2)基準法第三章(集団規定)→3)基準法第二章(単体規定 →4)施行令第四章(防火・耐火)+施行令第五章(避難規定)+施行令第五の二章(内装)→5)各種条例
を紹介いたしました。
今回は、審査手順①である「敷地の調査」について書きたいと思います。
設計を依頼を受ける際、まず用途地域や容積率、建ぺい率等の与条件の整理をおこうかと思いますが、確認申請の審査もまずその計画地の調査を行っていました。
01_地域性
結果から申し上げますと、この調査をしっかりやらないと後で痛い目に合う場合がありますのでしっかりやりましょう!記事後半にも書きますが、地域によって手続きもマチマチです。
例えば東京都内で法第42条2項道路に接する敷地で計画する場合、狭隘協議が概ねあるのですが、全国である手続きではありません。基準法上は道路中心ラインから2m後退すればいいので、特段手続き不要な行政庁の方がむしろ多い気がします。
確認申請時に都市計画法60条適合証明の添付をするか、どうかについても意見が分かれるところ。
ご存知の通り、適合証明は都市計画法上の開発許可等の要否判定をするための手続きです。これを必ず手続きし、確認申請書類として添付するかについては必ずしも統一されておりません。
そもそも確認申請に添付する図書や明示事項については施行規則に記載があり、決まっております。上記の都計法60条適合証明を例にしてみます。
まず施行令第9条(建築基準関係規定)見てみましょう。ここで記載がある都計法の条項に関してが建築基準関係規定となります。都計法37条制限解除は実は関係規定ではないんです。都市計画法は建築基準法の上位法という意識はありますが、なんでも紐づいているワケではないんですね。
施行令第9条第十二号に関する確認申請に添付する図書としましては、施行規則第一条の三に記載があり、「都市計画法〇条の規定に適合していることを証する書面 ※〇の部分は上記の都計法の条項」を提出する必要があるということになります。これが一般的には都計法60条適合証明を指すケースが多いと思います。
しかし、実際の運用と考えると適合証明の手続きを行っていない行政区もあれば、都計法29条許可を取得しても必要という行政区もあります。ですので、適合証明の確認申請時の添付は毎回照会をしておりました。
このような地域性はどの行政区でもあります。確認申請の受付前に裏版対応があったり、先行消防同意があったり、照会があったり、、
これら地域性で痛い目にあうケースがありますので、「敷地の調査」を行う場合は経験に基づいて省略せず、しっかり行うことを推奨します。
02_敷地調査について
では実際に敷地調査について内容について取り上げていきます。
かっこよくいえばフィジビリティスタディと言えるかもしれません。
私の中で法的整理を行う上で、一番重要だと思うのは間違いなくこのプロセスです。
・用途変更
・容積率・建ぺい率(角地緩和の細則確認)
・前面道路幅員(容積率低減・条例による幅員強化等・特定道路)
・防火指定の有無
・日影規制
・高度地区の有無
・地区計画の有無
・特別用途地域
・開発許可手続きの該当面積(都計法60条適合証明発行の有無)
・都市施設の有無(道路・河川・公園等)
・都市緑地法の該当の有無
・駐車場法による附置義務駐車場
・駐輪場附置義務条例
・バリアフリー条例の有無
・宅地造成規制区域の有無
・土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン等)
・臨港地区
・建築基準法条例
・建築基準法の取り扱いの有無
・・・等
上記のような内容はどの案件も必ずと言っていいほど確認してました。ここの調査を誤ってしまうと、後々大変な事態になってしまいます。許可手続き飛ばし、が最たるものです。行政庁によっては確認申請を取り下げろとまで言ってくるところもあるので要注意です。
03_調査方法について
調査方法についてです。
一般的に①インターネット活用+電話、②訪庁する、の2つの手法で行うかと思います。
確認機関は基本的には①の手法になります。
設計者さん等であれば②が多いと思いますが、私としても②をお勧めします。ご存知かと思いますが建築行為をする際の手続きは確認申請以外の行政手続きが多くあります。今私もその手の手続きを対応しておりますが、確認申請よりも労力を費やしております。
そのあたりも踏まえると抜けなく各課協議を行い、手続きと提出時期をおさえる必要があります。
では、調査項目について項目ごとの注意点を簡単に解説していこうと思います。※本記事は建築基準法に紐づく手続きをピックアップしてます。
04_用途規制等
用途地域、特別用途地域、容積率、建ぺい率、防火指定、日影規制については設計する際の基本中の基本ですので皆さんもそんなに悩まない項目かと思います。
ですが、建物用途や規模、建物の防火種別に影響を与える重要な項目。収支計画にも相当影響する部分ですのでしっかり調査していきましょう。
私は今ではインターネットで調べて、かつ訪庁で再確認ということまで行っております。
昨今の建築基準法改正で準防火地域で準耐火建築であれば建ぺい率が緩和される、等の法改正も行われておりますので緩和もうまく適用しながら設計いただけたらなと思います。
ちなみに建ぺい率の角地緩和の規定は計画地によって異なりますので注意が必要です。そこまで大きく違わないのですが地域性があります。
検索方法はその地域の例規集→その地域の〇〇〇建築基準法施行細則に記載されております。
↓足立区の例
05_高度地区
高度地区も概ね上記と同じ方で調査可能です。
高度地区は全ての行政区で定められている制限ではなく、東京都、横浜市、さいたま市、市川市、福岡市、名古屋市等の東西問わず主に都心部といわれるエリアで制限が設けられているケースが多いです。
高度地域は基準法58条に基づく制限で、行政庁ごとにその制限内容(都市計画)は異なります。
制限内容や既存不適格内容が異なったりしますので、日頃やり慣れない計画地で高度斜線の規定があれば内容はしっかり確認したほうがいいです。
例えば東京都と横浜市の制限を例に取ると、もし調査をあやまってしまえばもちろん勾配異なり、斜線に当たってしまうケースもありますし、
そもそもの考え方が違う場合もあります。
例えば東京都の場合、北側に道路がある場合は道路の反対側から斜線が始まりますが、横浜市は道路中心から斜線が始まります。横浜市の高度斜線の規定はその他も違う部分がありますので、取り扱いはよく確認下さい。
この違いを認識しないで設計してしまい再設計となってしまった話もあるぐらい注意が必要です。
06_地区計画
こちらも調査方法は同じです。
地区計画の規制に内容に合致させ、届出をするという手続きになります。
かなり限定されますが行政区によっては認定申請を行うことによって、容積率、高さ規制の、制限突破することができるケースもありますのでうまく、活用していきたい手続きです。
07_建築基準関係規定
『01_地域性』でも触れましたが建築基準関係規定についてです。
ここで確認しておきたい事項が施行令第9条に定められています。
上記以外にも高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 (バリアフリー新法)、都市緑地法も関係規定となります。建築を行う際、行政庁にて諸々手続きを行っておりますが、確認申請前に行う手続きもいくつかあるかと思いますが、基準法から紐づけているのは上記の建築基準関係規定によるものになります。それ以外の手続きは建築基準法から紐づいているわけではなく、確認申請の手続きを妨げるものものではないということになります。
ですので確認申請に関係する手続きというのは原則建築基準法に定まっているもの、施行令第9条にら定まっている関係規定によるものという事が前提となります。
例えば中高層の標識設置について、関係規定ではなく建築基準法とは実は直接関係する手続きではないです。
では、中高層の手続きによる確認申請の受付要件について、守らなくていいかという話ですが、私は基本的に守るべきかと思ってます。それは中高層側の条例側から確認申請に紐付けており、建築基準法関係規定外のルールであっても、中高層というルールは守るべきというスタンスです。
ですので、確認申請書三面【許可等】について記載するものとしては、基準法に関連するもの、建築基準関係規定に関連するものを記載するのが一般的、それ以外は【備考】に書くのが正しいと思っています。もちろん地域・機関にもよるとは思いますが。
これら建築基準・建築基準関係規定に基づく許認可は確認申請受付までにはしっかり手続きをしておく事が宜しいかと思います。(確認申請の受付要件になるかについてはケースバイケースです)
08_都市緑地法・駐車場法
ある一定の規模以上の建築行為を行う場合、緑化に関する行政手続きが多いですが、すべてが都市緑地法に関連する手続きではありません。
都市緑地法に基づく緑化地域等が定まっている場合が建築基準法関係規定に伴う手続きとなります。行政庁の例としましては、横浜市や世田谷区、名古屋市とかが代表的です。
この考え方は駐車場附置についても同様です。
まちづくり条例等により駐車場の附置が定まっていて、駐車場法に伴う駐車場の附置義務でなければ確認申請という観点だけでいえば影響はありません。
ちなみに東京都で駐車場附置義務条例に該当し機械式駐車場を設置する場合には認定申請が必要になったり、横浜市建築基準条例で機械式駐車場を設ける場合は大臣認定品にすること、等の地域性もありますのでしっかり調査すべき内容かと思います。
09_都市施設
都市計画道路内に敷地がある場合は、時計法53条許可が必要になったり、その敷地の特性から建築基準法に紐づいた許認可が必要になったりしますので、経験値ベースで敷地調査をしてしまうと漏れが生じてしまうかもしれないので注意が必要です。直近の案件では塀が都市計画道路内にあり都計法53条許可を取得した案件もあります。以前ではあまり言われてきておりませんでしたが、CB塀の事故から建物に附属する門・塀は建築物であるということが浸透してきたからかもしれません。
都市施設関連では近くに河川がある場合も注意が必要です。
都市河川の場合はその計画線が敷地に干渉している場合は、都市計画道路同様に許可手続きが必要となります。
10_土砂災害特別警戒区域
土砂災害特別警戒区域についてですが、調査方法に注意が必要です。ホームページ等で用途地域を調べたり、都市計画課等に問い合わせした時に土砂災害特別警戒区域の該当の要否等は原則確認できません。要は建築系の窓口ではない事が一般的です。いわゆる砂防課等が関連窓口となりますので、調査先も注意が必要となります。
敷地図をみて周囲に山並みのコンターラインがある場合は必ず確認したほうがいいと思います。
また土砂災害特別警戒区域のエリアには該当していなくても、近接していればその地域のガケの規定に抵触する場合もあります。
特に近年土砂災害も頻発しておりますので、設計側も感度をあげて臨んでいく項目かと思います。
11_建築基準条例・取扱について
東京都であれば東京都建築安全条例、横浜市であれば横浜市建築基準条例のように建設地によって建築基準条例の規制があります。建築基準条例は基準法と違いかなり該当項目に特殊性がありますので、計画初期段階から確認しておく必要があります。
接道義務の強化や各用途ごとに様々な項目が追加されております。
また建築基準法の取り扱いについですが、必ずしもあるものではないのですが、ある場合は原則準拠する必要があります。確認機関も審査に考慮します。
例えば都内であれば葛飾区、新宿区、世田谷区、(他の区にもあります)等には取り扱い基準を出し、例えば東京都建築安全条例の窓崎空地考え方等を明記していたりします。
関西圏も北海道もこれら基準を出しておりますので、やり慣れないエリアのプロジェクトがスタートする場合はこのあたりもしっかり調査してする必要があります。
12_手続き
確認申請関連の手続きにも、かなり地域性があります。
例えば消防同意についてですが、基本的には確認申請受付後に消防同意の手続きを行うかと思いますが、関西の一部の地域では確認申請受付までの手続きの一部として確認申請受付前にか消防同意が完了するというケースもあります。
仙台市では受付前に消防の裏判手続きが必要であったりと、消防同意という手続きだけでもかなり地域性がありますので、この地域性というワードには注意を払う必要があります。
敷地調査という切り口で手法や注意点を書いてきましたが、正直言って上記の項目が全てではありません。用途よっては建築基準法51条の【卸売市場等の用途に供する特殊建築物の位置】による手続きが必要になったり、都市計画外でも容積率や建ぺい率の制限がある場合があったりと、敷地によって様々な制限がある、それは経験則だけでは免れる事が難しい事がある、ということをお伝えしたいという事で、この記事を書きました。
とくに地域性というキーワードは一番リスクが大きいところです。その地域では当たり前のことが新規でやる設計者には情報がなかなか伝わってことない、それら情報が共有できる仕組みが現状ありません。
ですので設計を行う皆さんがしっかりその辺りの調査が必要になるということを強調しておきます。
まだまだ書き足らない所もありますが、かなり文字量が増えてしましましたのでここまで。次は集団規定について書いてみようと思います。
おしまい。
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