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【スポット相談】路地状敷地と長屋

東京都の路地状敷地の場合、東京都建築安全条例(以下、都安)によりかなり建築的制約があり、都安第9条で定まっている「特殊建築物」は原則建築することができません。(一定の建築することは可能、都安第10条参照)

ですので、路地状敷地で「共同住宅」を計画する場合、上記を理由に建築することができず「長屋」という住戸形式になるケースが多いです。

ちなみにH31年の都安の改正で長屋に関しても2方向避難等が義務付けられました。つい最近の改正のような気がしてましたが、もう5年近く経過しているので当たり前になっているかもしれませんね。

今回もそのような案件の御相談です。特にポイントとなった項目は三点です。

①駐車場を設けることが出来るか。
②都安5条第1項の主要な出入口
③路地状敷地の代替進入口

1つ1つ簡単に解説していきます。

①駐車場を設けることが出来るか。

「集団規定の適用事例2017」によると長屋と共同住宅の違いとしては『廊下・階段等で各住戸で共有しない形式のもの→長屋』、『廊下・階段等で各住戸で共有する形式のもの→共同住宅』と説明されております。
駐車場に関しての取り扱いの記述がなく、またその特定行政庁の取り扱いをだしていない状況でした。「集団規定の適用事例2017」を読む限りですと、共用廊下等を設けてしまうと共同住宅になると判断される可能性もあるので、駐車場への経路も直接外部からとし、共用廊下を排し、また念のため特定行政庁に駐車場設置の可否をヒアリングをしました。結果可能という判断となりました。

②都安5条第1項の主要な出入口

都安5条の主要な出入口からの避難経路部分に庇・屋根下を通過することが可能かどうかについてです。解説にもある通り原則青空、しかし局所的な庇等は可能と書いてあります。この判断は確認機関も非常に見解が分かれるところでした。本案件とは別の案件で複数の指定確認検査機関にヒアリングをしたところ原則青空を採用しているところが多く、計画上まだ青空経路が確保できそうだったため、そちらを採用することによってリスクヘッジを行いました。

③路地状敷地の非常用進入口

3階以上には非常用進入口(代替進入口)が必要となります。共同住宅や長屋の場合は非常用進入口ではなく代替進入口を設置することが多いかと思います。一般的には道または道に通じる4m以上の敷地内通路に設置するかと思いますが路地状敷地の場合はその規制を満たすことが難しい。その場合一般的には防火避難規定の解説にもある「路地状敷地の非常用の進入口の取り扱い」を採用するケースが多いです。
ここでは路地状長さ、建物の階数等が制限されております。
よく問題になるのが、これら進入口が道から視認できるかどうかの判断です。これに関しては特定行政庁も取り扱いを出している場合があります。

建築物の防火避難規定の解説2016より

建築基準法に書かれている内容やその計画地の取り扱い、集団規定の適用事例等の書籍などの判断根拠がある場合は比較的に悩みませんが、今回のケースのように長屋用途に駐車場を設けた場合、それが共用部とみなされるかどうか判断がつかない、等は非常に微妙な内容です。しかし建物が建築できるかできないかというインパクトが大きい事項でもあります。

このような場合は自分の誘導したい項目になるようにロジックを組み、特定行政庁との協議が最も有効かと思います。電話だけですと内容がうまく伝わらない場合もありますので、このような大きな内容は是非図面を見ながら協議することをお勧めします。

記事の内容は個人情報保護の観点より設計者・場所等が特定されるような情報は排除させて頂いております。また多少の脚色も加えております。
また本記事の内容につきましても各行政庁、指定確認検査機関と判断が異なる場合もありますので、一つの方法論として参照として扱って下さい。

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