あの春のまっすぐを【コラム】
第93回選抜高校野球大会が、3月19日に開幕する。今年は21世紀枠から3校含む全32校が出場する。沖縄からは具志川商業が21世紀枠で初めての甲子園。春の県勢としては6年ぶりの出場になる。
沖縄には野球があった。
草野球から戦後の米軍統治下の野球チームとの親善試合まで、様々だ。
沖縄と甲子園には様々なエピソードがある。戦後初めて沖縄代表として甲子園に出場した首里高校は、甲子園の風物詩である土を持って帰れなかった。(アメリカ統治下だったので)。そのあとに安仁屋宗八が率いる、沖縄高校(沖縄尚学)が自力での出場を果たし、本土から沖縄へ“国際電話”がかけられる企画もあったとか。
とにかくものがない沖縄の戦後。安仁屋が巨人戦で投げるとなれば道路から車が消えるほど、生活に根付いたものである。ぼくの友人の体験としては、スーパーでレジをしていて「今日甲子園どうなったの?」と客に聞かれるほど甲子園を、沖縄を応援する県民性があるのだ。
沖縄に優勝旗が初めて渡ったのは忘れもしない99年第71回選抜高校野球大会である。安仁屋宗八のいた、沖縄尚学高校である。エースである比嘉公也の1試合で212球を投げぬく熱投もあり、99年は沖縄フィーバーが巻き起こった。商店街の街角にテレビが置かれ、買い物客も、店で働くひとも一喜一憂した。
そこには故・栽監督など偉大な指導者の努力が見える。一年生大会。他県の強豪との練習試合。それが確実に力になっての99年だった。
さあ、球春到来。
沖縄ではプロ野球のキャンプがはじまり(コロナ禍で押し切ったのはどうかと思うが)、野球熱が暖かくなるとともにシーズンがはじまる。今年の寒緋桜はもう咲いている。センバツにでる選手にサクラは咲くのか。
今から楽しみだ。
ひとつ言うならば150Kmを投げるピッチャーや、豪快なホームランを打つバッターが取りざたされる中、(もちろんそれはすごいのだが)このコロナ禍で、小手先の技術ではなく、あのときのような一生懸命なまっすぐをみたい。
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