![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48579172/rectangle_large_type_2_d45c65eac4865cc62ef6d544aa41a803.jpg?width=1200)
ペインフル【散文】
「ひとの痛みをわかるひとになりなさい」ってだれかに言われた。ぼくはすぐに納得した。そんな強いひとに、ぼくはなりたかった。だから、だれかの痛みによりそってきた。家族や友人、恋人に。
わかるひとになるには経験することがいちばんだと思った。ときに苦境のなかに自らをおいた。
血だるまになるほどじゃないが、多少の痛みは抱えて生きてきた。ドラッグやバイオレンスだって手を染めた。どっちも痛みに耐え切れずやめた。
入れ墨、睡眠薬、水。ノートと鉛筆。今のぼくにかかせないのはそれぐらいか。
自殺したいひとによりそおうとした。気がつくと、自殺しないか心配されている自分がいた。
死が身近に迫ってくるたび、ぼくは死のとなりにある勇気に腰かけてきた。本土への進学。文章の寄稿。音楽ライブ。祭り。学生運動。ふるさとへの帰郷。大学編入。小説の出版。ラジオ出演。脚本の挑戦。
あの日から必死に走ってきた。つぎはどんな勇気にたどりつくだろう。ぼくはぎりぎりだが、ぎりぎりな今こそ思うことがある。
ぼくは、幸せなんじゃないかということだ。
ぼくは追いかけてくるなにかと、追いかけなくてはいけないなにかが、手をとるのを見た。なら、どんな風に走っても幸せなんだろう。
ぼくは言いたい。できることなら、今まで出会ったひと全員にあって言いたい。
ありがとうございます。と。
ありがとうございます、これがあなたのくれた人生ですと。ぼくは寂しいにんげんだけど、寂しさの中に懐かしさを見出し、おもいっきり泣くことのできるぼくはにんげんですと。幸せですと言いたい。
そして愛したひとに、今も愛していますよと、高らかには言えないけど、目を見て言いたい。
まだ、ぼくにはやるべきことがあるみたいだ。
死なせないよ。
いいなと思ったら応援しよう!
![Asha Wakugami](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/44139307/profile_4a0ecc27e2b8f559ebf8428baa759b5a.png?width=600&crop=1:1,smart)