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2023年ベスト映画


2023年に観たなかで特に印象的だった映画を7つ紹介していきます。


⚪︎ザ・ホエール

大切なひととの死別から立ち直ることができないおじさんが部屋に引きこもって、過食から太りすぎ、死を待つだけという映画です。

自分勝手に生きているからひとを傷つけてしまいます。しかしひとを傷つけないように嘘をついて自分の気持ちを押し殺して、本当にそれが正しいのでしょうか。どう生きていてもひとを傷つけてしまうのだったら、素直に生きたほうがいいのではないだろうか。何が正しくて何が正しくないのか判断することは難しいけど、素直に生きているひとの目は魅力的にみえます。

映画のなかの「人生でひとつ正しいことをしたと信じたいんだ」という台詞がずっと頭から離れず、エンドロールが終わったあとも放心してしばらく椅子から動けずにいました。

⚪︎still dark

盲目の青年がレストランでシェフを目指すという映画です。青年、同僚、店長の3人しか出てこなくて、派手さはないし淡々としてはいるけど、それぞれの人間の魅力が引き立っていて素敵でした。

人間の魅力はそのひとの自然さだと思います。同僚と店長に無理はなくてふたりとも自然で、だからこそ主人公に対する優しさや配慮が美しく見えました。

主人公はあるきっかけからある目標を持ってレストランで働き始めるのですが、人生が動きだす瞬間は、それがどんなきっかけでも、どんな小さな目標でも尊いと感じます。辻褄を合わせて作られたようなものではなくて、熱量の伝わってくるきっかけや目標を自分は美しいと思いました。

⚪︎ケイコ 目を澄ませて

聴覚障害を持つプロボクサーが主人公で、彼女の日常が淡々と流れていく映画です。物音、動き、表情、それらの描写が研ぎ澄まされていて、制作に関わるひとたちの静かな情熱を感じました。

母親から「いつまでボクシング続けるの」と言われた場面が印象的で、それは本人にとっては「いつまで生きているの」とおなじような言葉なんじゃないかと思いました。

⚪︎滝を見にいく

おばさんたちが滝を見にいくツアーの途中で、遭難するという映画です。遭難先でサバイブしていくポップでユーモアラスなおばさんたちの逞しさがとてもよかったです。生きていくのに必要なことは何なのか、教えられたような気がしました。

⚪︎パイレーツ・ロック

音楽の放送に制限があった1960年代のイギリスが舞台で、制限されていたポップスやロックを船の上から電波を使って放送する「海賊ラジオ局」に住んでいるひとたちに焦点を当てた映画です。音楽が印象的で、それだけを取っても、映画が強く記憶に残りました。

好きなものを好きだと言うことができて、好きな分野の深掘りを続けていて、やりたいことをやりたいようにやる、それは単純そうなことだけど時には難しいことでもあって、海賊ラジオ局のひとたちが輝いて見えました。

⚪︎エビボクサー

巨大なエビをボクサーにして金稼ぎを目論むという映画です。くだらないB級映画なのですが、くだらない映画をみていると元気になります。楽しそうに映画を作っている光景が透けて見てくるようで微笑ましかったです。

今年「キラーカブトガニ」というカブトガニがひとを襲うB級のパニック映画もみたのですが、キャッチコピーが「サメの時代は終わった」で、ふざけているのかと思っていたら、監督がひとりで製作・脚本・編集のほとんどを手掛けていて、しかも制作に6年も時間をかけていてかなり本気でした。

⚪︎バグダッド・カフェ

派手な演出はなく景色も色褪せているけどずっと見ていられる映画です。退屈さもあるけど時間の流れかたがよくて、地方にある地元のことを思いだしました。時間の流れかたがいいと、展開がゆっくりとした映画でも冗長に感じません。

出演者の大体がみんなさわやかに自分勝手に生きていて魅力的でした。自分勝手に生きているひとにも、不快に感じる自分勝手さと、さわやかな自分勝手さがあると思います。他にも自分勝手なひとたちを観たかったら「幸福の黄色いハンカチ」もよかったです。


⚪︎選考

「ベスト」という言葉を使いましたが、本当はどんな映画も、それぞれに好きなところがあり、どこかには魅力があるので、あまり映画を順位づけするのはすこし抵抗があったのですが、便宜的に使いました。

何を持って「ベスト」とするのか難しくもあったのですが、個人的には観てからしばらく経ったあとでもたまにセリフや音楽や役者の表情を思い出したり、考えごとをしたり、誰かに語りたくなったり、そういうのがいい映画なのかなと思って選びました。

主観的な選びかたをしているので、おすすめかというとはっきり「是非見てください」とは言えないのですが、こういう魅力があったよとひとから聞くのが自分は好きなので、そういう使いかたをして興味を持ってくれたら幸いです。


⚪︎さいごに

自分が映画でいちばん魅力的だと感じるのはいつでもどこでも観ることができて、観ていれば終わるというところです。

精神的に参っているとき、何も気力がわかなくて外出できなくても映画は観ることができました。不安で眠れない夜も映画を観ることで時間をやり過ごすことができました。

うつ状態のとき、読書では内容が頭にはいってこなくて悲しくなりましたが、映画はそれほど頭にはいってこなくても時間がくれば勝手に終わるし、映像だからなのか何かしら印象に残るものがありました。

来年も、好きな映画が増えたらいいなと思います。みなさんの好きな映画の好きなところもたくさん教えてほしいです。

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