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先生の多忙化をふまえて注目したい「Student Agency」というOECDの概念について

最近、先生たちから「子どものニーズが多様化していて、突発的な事案が増えてきている」と聞くことが多くなっている。
ほんとは集中したいときにもトラブルや対応がしょっちゅう入るし、中々腰を据えて時間を確保するのは学校の中で限られていると。教材研究も本当はもっとしたいけれども、特に15時以降の下校時間は忙しく、個別対応とホームルームと、会議とそれから保護者対応と色々重なって、部活動が始まって見に行ったりしていると、バタバタしているうちに日が暮れる。教員という仕事は、教壇に立ちながら事務作業もこなす究極のマルチタスカーだと思う。

この状態で、個に寄り添うことは、さらに多忙化に向かわせていることになっているんだろう。
なぜなら多様化する個々に寄り添い、個性を尊重するということは、40名の生徒たちに、一通りのやり方をやめて、40通り用意することになるからだ。しかも昔に比べて、家庭環境だって、人間関係トラブルだって、生徒たちの将来の職業だって、どれも多種多様。生徒がYoutuberになりたいとか、NPOに勤めたいとか言い始めたら本気で支えたくても、就活ルートも見えにくいし、対策も考えにくい。共働き家庭が増えるなかで、保護者対応を本気でやるなら、電話が繋がるのは20時過ぎるかもしれない。最近はLINEじゃなくてInstagramだとか言われたら、直接会話せずに連絡取り合ってるってどういう状態?と生態系もなかなか難解。趣味も多様化していて、ジャニーズだけ知っていても雑談が成立しない。考えるだけでも、こちらも苦しい気持ちになってくる。全方位見るのは無理ゲーすぎる!

・・・・でも本当にそうだろうか?
引っ繰り返して恐縮だが、ほんとうに今のやり方しかないのか。ほんとうに個性を尊重すると学校現場はどんどん疲弊してしまうのか。これが問い直したいテーマだ。
それに、すでに疲弊している学校現場は多い。多様な生徒がいる学校ほど、余力のなさが蔓延している。この余裕がない状態だと、他の選択肢があることを忘れてしまいそうになるけれど、この無理ゲーをどうしたら超えられるか、俯瞰して考えることが、学校関係者にとって今一番大事な問いだろう。

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で、そのヒントの一つがOECDによる「Student Agency」という考え方だと思うのだ。これはOECDが最近アップデートした「Learning Compass 2030」という概念の核となるもので、「生徒の自律性」などと訳されている。
そもそも、この「Learning Compass(学びのコンパス)」とは、生徒が学びに向かうために必要な要素をコンパスにしたもの。4つのコンピテンシーに構成されていて、教科教育であれ、キャリア教育であれ、PBLであれ、学びを進めるとは、このコンパスに含まれた概念が関係し合って「行動→ふりかえり→見通し」というAARサイクルをぐるぐる回しながら進むことになる。

大切なのは、コンパスを手ににしているのは「生徒」であるところだ。
今のところ、大抵の学びや生徒と先生の関係において、到達すべき習熟度に向けて道をつくり、案内しているのは「先生」だと思う。学びの教材も、学び方も、進める速度も、全部先生が決めていくのが当たり前だ。
しかしこの「Learning Compass」では、その学びのエージェントとしての役割を、子どもに託して、このStudent Agencyを高めていくことが先生の役割だと説明されている。個々のニーズに対して、先生が全部準備するのをやめて、生徒が主体性と意思決定をすることになり、Teaching(教える)から、Learning Support(支える)ことが先生の役割になる。

とても性善説的な概念だと思う。いやいや、「自分の力で学ぶことはまだまだ弱いから、そうしたいけど先の話だなあ」とか「うちの学校の生徒たちだと、無理だなあ」とか聞こえてきそうだ。
たしかに、これは近代でずっと進めてきた当たり前の「先生」の姿とはだいぶ違う。戸惑いの方が多くて、転換するのが難しいのはその通りだと思う。変えるにはかなりの勇気が必要だ。
でも「生徒の主体性」を育てたいといいながら、学びのオーナシップを先生が持ちつづけてきて、今、どんな課題を子どもたちに感じているのか。

失敗するかもしれないなあ、くらいに半信半疑でも、少し生徒に委ねてみてほしいなあと思う。文化祭や部活動からまずは始めて、一度でいいから、あれもこれも用意するのをやめて、その前に「どうしたい?」と問いを生徒に投げてみてほしいと思う。一緒に考えて、色々アイディアが子どもから生まれてきたら「おお、自分でやってみたら!」と背中を押してみてほしい。これは、、と思うことも、託してみて、見守ってほしい。生徒が授業をする日があっても面白いと思うのだ。
この「託す」というのは、放っておくこととも違うから、とても難しいものだけど、子どもたちに託してみて、一緒に続きの議論したいと思う。

そして!これは学校だけの話じゃないと思う。それぞれが所属している組織でやってみてほしい人の育て方だと思う。

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