2024わたしの山ニュース
マスター、志保さん、いつも楽しく聴いています。
2024わたしの山ニュースは「主治医と同窓登山したこと」です。
初夏の南蔵王、秋の栗駒山。2回も…!
それはそれは、記念すべき楽しいお山でした。
少し長くなってしまうのですがぜひご報告したく、お便りしました。
マラソンが趣味でトレーニングのために登山を楽しんでいた元気印の私でしたが、2020年春に口腔がんが見つかり、手術、放射線治療。辛い日々を乗り越えあとは良くなるだけと思っていた矢先、翌2021年春には左顎関節から下の骨が壊死しているとの診断で、左腓骨と太ももなどの筋肉を使って下顎を再建することになってしまいました。私をあちこちに連れて行ってくれる大切な足なのに…その骨や筋肉を失うことはとても辛く、悔しく、悲しいことでしたが他に選択肢はないようでした。もう一度山に行くんだ、マラソンにも復帰したいんだ、という強い希望を主治医にお伝えしたところ、どうやら主治医も山好きの方のようで「山はいいですよね…山にはまた行けますよ、頑張りましょう」と、しみじみとおっしゃったのです。12時間を超える手術を終えて、ほとんど身動きできない苦しく辛い数日間はその言葉を支えにただ耐えていました。
1週間後の朝8時前。ドクターがやってきて言うには「処置室まで来れますか」と。その時は歩行器で室内のトイレまでの2-3mをやっと歩けるようになったばかり。処置室は15mほど先です。それでも、来れますか?と訊かれたら行きますと言っちゃいます。ゆっくりゆっくり、時間はかかったけれど何とか処置室に到着すると、カーテンがさーっと開いて奥にドクターの姿が。「すごいですね!よくがんばりましたね…!さぁドレーンを抜きましょう」手早く処置すると「ここからはご自身ががんばる番ですよ」と去って行ったのでした。
ドクターは朝の忙しい時間にカタツムリみたいにゆっくり進む患者を待っていてくれた…ドクターに励まされた嬉しさから、少しでもスムーズに、遠くまで、早く、前のように歩けるようになりたい…大部屋に移るとその一心でリハビリを始めました。
週の終わりの夕方、またもやドクターが現れて「明日から夏休みで不在にしますが、順調ですから…何かあればいつでもスタッフに言ってください」と。夏は飯豊連峰を縦走するのだそうです。わぁ羨ましい…でもすごいお仕事をされているドクターだからこそ、とびきり上等の夏休みになってほしい。病室の窓から一望できる七ツ森、泉ヶ岳、船形連邦を眺めながら「まずは泉ヶ岳に行くぞ…そしていつか、私も飯豊縦走するんだから…」と強く強く誓ったのでした。
そんなこんなで時は流れ、この間、2023年12月末に受けた5回目の手術に至るまでドクターにはまる3年間お世話になりました。幸い病状も安定しており、ご飯もいつも通り食べられるようになり、足のリハビリを続けてまた登ったり走ったりできるようにもなり、最後の手術がうまくいった時は心から「バンザーイ!」という感じでした。
お付き合いも長くなると患者も図々しくなりまして、同い年生まれのドクターと50歳のお誕生日のお祝いをどうしてもしたいと願うようになりました。それでお断りされるだろうと思いながらも、診察のたびに「お祝いしましょう」とかなりしつこくお誘いし続け、とうとうお茶をご一緒することになりました。話題はやはりお山のこと…山に登るようになったいきさつなどをお話しているうちに、な、なんと!!ドクターは大学の2学年後輩で、しかも夫(私とは同級生で隣の研究室出身)と同じ研究室に1年間、同時期に在籍していて交流があったこと(とはいえ夫は青森、ドクターは沖縄を研究フィールドにしていて接点は多くなかったこと)、私たち夫婦の友人・先輩とも知り合いであること、大学4年卒業後に医学部に入りなおしてドクターになったこと、などなどがわかったのです。
えっ…そんなことってあるでしょうか?3年間に5回も執刀し、そして励まし続けてくれたドクターが実は、学生時代にすれ違うどころか同じ空間に居たかもしれない後輩だった…?!
夫も術前説明で何度かドクターにお会いしていましたが、まさかそんなことがあろうとは夢にも思わず、全く気が付かなかったようす。でも「〇〇の研究をしていた方」と言うと「あーー!アイツか!…え、ええー??」とびっくり仰天。いや、アイツではなくドクターです。
大学の先輩&後輩だと判明したので、同窓会をやりましょう、とお誘いすると「いえ、それより一緒に山に登りませんか」と。
えー!?な、なんとー!そんなことってホントにあるんでしょうか?!
抜群の好天に恵まれたのでしょう、まっ赤に日に焼けて飯豊縦走の夏休みから帰ってきたドクターがメチャクチャに羨ましく、「日焼け止めは使った方が良いと思います」と心の中でつぶやきつつリハビリに励んだあの日から4年。いつかどこかの山で偶然ドクターにお会いすることもあるかもしれない、そうしたら花の名前は私が教えてあげよう(患者を治すことはできないけれど)、と妄想しながら登ることを再開して3年。記念すべき第一回同窓登山は、ドクターと私たち夫婦の計3人で、6月下旬の梅雨の合間に、私の大親友の蔵王山にて、アクセス良好で近場では抜群の高山植物群落を楽しめる南蔵王を周回するコースを計画しました。当日は晴天に恵まれ、水引入道では目の前に迫る大迫力の屏風を堪能し、屏風に取りつく前の急登をえっちらおっちら登り、屏風に上がってからは気持ちの良い稜線を満喫しながら南端の不忘山への天空散歩。途中、南屏風岳で山菜おこわのお弁当。高山植物は春が終わり夏の準備を始めたところで少なめでしたが、タカネバラが高貴なピンク色の花を咲かせていました。むかし青年だったおじさん2人とむかし女子だったおばさん1人の道中はただ単純に、本当に楽しくて、秋には紅葉の栗駒山にも出かけたところです。もちろん下山後は温泉に入ってノンアルビールで乾杯♪♪♪付きで。
呼び出しも入院もなく、通院も最小限だった2024年は、山もマラソンもやっと楽しくなってきました。ここまで戻ってこれたことに深く感謝しています。今日も、今この時間も忙しく立ち働くドクターや医療スタッフの方々がいらっしゃると思います。身動きできず不自由な身体を横たえ耐えるしかない方も、年末年始を病院でひとり迎えられる方もたくさんいらっしゃると思います(私も去年の年末年始は入院中で三が日はずっと経鼻栄養でした)。今年は元気になった…と感じられるからこそ、今、この時より、よりよくありたいと願うすべての方にエールを送りたい気持ちです。もしかしたら、願えば叶う、のかもしれない。もちろんダメなことも、そんな時もあるかもしれないけれど、やってみなくてはわからないのだから…まずは願うことから、今できることから始めてみましょう…と。
来年は…山に泊まる日をふやしたい。そして日の入りや日の出をゆっくり眺めてみたいです。大親友の蔵王さまでトレーニングしながら、今年行った山のうち、栗駒山、月山、飯豊連峰には季節を変えてお花畑シーズンに行きたい。未踏の秋田駒ケ岳にも。そうして山のスキルを少しずつステップアップさせていきたいです。さて、同窓登山3座目はどちらのお山が良いかしら…
長々しくなりました。さいごまでお付き合いいただきありがとうございます。今日は冬至。今朝はピンク色に染まる威風堂々の蔵王さまがすっきりと見えました。冬至がすぎればどんなに寒く雪がふっても、徐々に徐々に、また春がやってきます。今年は雪が多いとのことです。マスター、志保さん、リスナーの皆さまもどうぞご自愛くださいませ。
良いお年をお迎えください。
追伸
2024山ニュースをNHKラジオ「山カフェ」に600字で投稿したところ
12/21、朝08:45に見知らぬ番号から電話がかかってきました
不安になりつつ出たら、な、なんと!
山カフェからの生出演依頼の連絡でした!
こんなことってあるんでしょうか…
番組ではまるでドクターの2人の同窓登山だったような流れになってしまったのですが、とても大切な(笑)かけがえのない(笑)夫も、もちろん一緒、3人でのお山だったことを申し添えたいと思います
見つけてくださったスタッフの方に大感謝です
また投稿しようかな〜