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喫茶ポエムにて



ずっと前から行きたかった元町の喫茶店の喫茶ポエムに来た。
店は、こうべ元町商店街をまっすぐ入ってかなり歩いたところの細い路地のようなところにあった。
ひとりで店に入るのは緊張したが、意を決して、レトロな扉を開けた。
私わ待ち受けていたのは、煙草の香りだった。
少し煙草の香りにうんざりしながらも、喫茶店だからこんなものか。と思うことができた。
SNSの効果なのか、ひっきりなしに客が店へと入ってくる。

カウンターの席についた。カウンターの角席は、深緑の古びたレジスターがあってワクワクが止まらない。
目の前には「フォルテシモ」や「大相撲刑事」、「桜の花咲くころ」という知らない名前の漫画が並んでいる。

私は早速自家製プリン、ミックスジュースを注文した。
10分ほどすると、照明に照らされ、煌々としたカラメルがかかった大きさは小ぶりだが、高さが従来の物よりは高かった。そのプリンをすくって、口に運んだ。
たまご感の少ない素朴な甘さが口いっぱいに広がった。
プリンの脇には、一絞りの生クリーム。
その一絞りの生クリームを、分けずに豪快に丸ごとそのまま口にやった。
今日頑張って、歩いてここに来てよかったと思えた瞬間だった。


この文章を書きながら、ミックスジュースをちびちびと飲んでいる。
ミックスジュースには、さくらんぼとホイップクリームが仲良く浮かんでいた。
私はずずずとストローでミックスジュースを吸う前に、先にさくらんぼを食べた。
ホイップクリームは、黄色の甘い海に沈めてあげた。

店主らしき人が飲み物や食べ物を調理する音が聞こえる。
チェットベイカーのジャズが聴こえる。

私が待ち望んていた空間に限りなく近かった。
(煙草の匂いさえしなければ)
そう言って、書き続けていたら、隣に座っている煙草を吸っている男性が「煙草(の匂い)大丈夫ですか」と聞いてくれた。
なんて優しいんだ。と思った。
他にも吸っている人はいるのに。
私は「吸っていただても結構ですよ」と答えた。

カレーを調理する音、カレーの美味しそうな匂いが鼻を覆った。

ミックスジュースの最後のひとくちを口にした。
どうやら、ホイップクリームは、ジュースにはあまり溶けなかったようだ。
それでもいい。早く店を出よう。
可愛らしいステッカーを買い、会計を済ませた。
私は17時のチャイムが鳴るのを聞き、店を後にした。