"〇〇テック"の都市ニューヨーク(NYC) -- シリコンバレーと違ったスタートアップ・テック環境
こんにちは、久しぶりにNoteを書こうと思います、Wakkiです。
昨年の11月に、勤めていたデンマークの脳科学領域の会社を辞め、友人のスタートアップにCTOとしてジョインしました。現在はデンマークからニューヨークに身を移し、現地でウェアラブルデータを用いたソフトウェアサービスを提供しています。
これまでサンフランシスコ -> デンマーク(ヨーロッパ) -> ニューヨークと世界を転々としながら生活してきましたが、それと同時に現地のスタートアップエコシステムやテクノロジーにも積極的に触れてきました。
ニューヨークといえば芸術や音楽の街という印象が強いかもしれませんが、実はシリコンバレーに負けないくらい、スタートアップやテックも盛り上がっています。この記事では、僕が現地に来て実際に感じているニューヨークのスタートアップ・テックについて触れていきたいと思います。
なお、デンマークでのテック・スタートアップ事情については、別の記事に詳しく書いてありますので、気になる方は是非こちらをご覧ください。
スタートアップエコシステム世界2位の都市 NY
今年4月に米国の民間調査会社PitchBook社が発表した「スタートアップ都市ランキング」では、ニューヨークはサンフランシスコに次ぐ世界第2位のスタートアップ都市と位置付けられました。このランキングは、資金調達額やExitの数などで評価されていますが、大学施設やインキュベーション施設は考慮されていないため、広義のエコシステムランキングとして捉えて良いかはわかりません。ですが、スタートアップを中心に多額の資金が動いている都市であることがわかります。
下記の画像は、ある個人投資家によってまとめられた、ここ数週間のトップティアVCからシード資金を調達した企業の一覧です。これを見ると、ニューヨーク発のイケてるスタートアップがBay Areaに負けないくらい多いなという印象を受けます。
実際に現地に住んでいても、スタートアップ向けのイベントやミートアップが毎日数多く開催されており、ネットワーキングの側面でもその勢いはとても強いと感じます。
先日行われたa16z主催のNY Tech Week 2024では、1週間でおよそ700以上のスタートアップやテック関連イベントが開催され、州外含め多くの人々が参加していました。
〇〇テックが多いに発展
以前サンフランシスコに住んでいた時と比べて感じるニューヨークのテックの大きな違いは、特定の複数分野でのテクノロジーの応用と市場開拓が多いに進んでいる点です。
サンフランシスコでは、いわゆる“AI”や“SaaS”といった技術やサービスカテゴリ周りの注目が強い印象がありますが、ニューヨークでは、フィンテックやヘルステック、リテールテックといった、昔から発展していた領域においてテクノロジーを活用する、いわゆる「〇〇テック」の事業が盛んに行われています。
フィンテック
ニューヨークはウォール街があるほど金融業界で有名な都市であり、フィンテック企業も多く存在します。
2023年には、フィンテック企業への投資規模がBay Areaに次いで$4.7 Billion(約70億円)に達し、これは2023年米国での投資額の約20%を占めました。 (参照)
フィンテック従事者が集まるイベントも多く、4月にはNFT NYCという大規模なカンファレンスが開催されました。
また、通常のテックイベントに参加しても、会話する人の半分ほどがフィンテック関係者であることがよくあります。彼らがなぜそのようなイベントに参加しているのか話を聞いてみると、JP Morganなどの大手金融機関で働いている人が、Web3関連の分野で投資検討をしていたり社内で新規事業を立ち上げたいと考えているケースや、次のキャリアとしてその領域のスタートアップに挑戦したいと考えている人が多いようです。
ヘルステック
ニューヨークがヘルステックの一大拠点として発展を遂げていることも、ヘルステック領域で挑戦する僕らがこの都市にいることの大きな後押しとなっています。
米国の民間調査会社Startup Genomeによると、ライフサイエンス領域において、ニューヨークはサンフランシスコ、ボストンに次ぐ世界第3位の発展都市と位置付けられました。
ニューヨークは、サンフランシスコなどの他都市と比べて女性の割合が比較的多く、フィットネスや健康志向の人が多い都市です。そのため、ヘルスケアやヘルステックへの注目度が高い傾向があります。実際に街中を歩いていると、モデル体型の方々がジムから帰ってくるのをよく見かけますし、新しい出会いの方法として話題のランニングクラブも多く存在しています。僕が参加したテック/スタートアップイベントでも、いわゆる不健康そうなギークみたいな人はあまり見かけませんでした。
ヘルステックイベントも盛んで、健康食やダイエットに特化したイベントから、医療目的でのAI活用に関するテックイベントまで、毎週多く開催されています。
以前、僕も「Healthcare Conference NYC」となるものに参加しましたが、腸内ヘルスや健康食などさまざまなトピックが取り上げられていて非常に興味深かったです。ただ、参加者の多くはアン・ハサウェイのようなスリム意識が高い欧米女性ばかりで、男性はほとんどおらず、ましてやアジア人男性は特に少なく、疎外感でその時のメンタルヘルスは良くなかった気がします(笑)。
多文化多国籍だからこその、文化ごとのコミュニティ形成
人種のサラダボウルといわれるニューヨーク。多種多様、多文化な人が集まるゆえ、各文化に紐づくコミュニティの形成が強く行われる傾向があります。
スタートアップシーンでもこの傾向は顕著です。
実際にイベントアプリを開いてみると、「Asian founders」だったり「Immigrants founders」などのイベントがあったりと、マイノリティの人々でコミュニティ形成を行い、手を取り合って成功していくケースが多く見られます。
ニューヨークではデンマークにいた時と比べて、アジア人としてのマイノリティを感じることは少ないですが、多文化多国籍の都市ゆえに、仲間意識は強く、アジア人同士など似た境遇の人たちが仲良くなる光景がよく見られます。
実際に、「Asian founders」のイベントでは、出生国限らずアジア系のエスニシティの人々が参加し、そのコミュニティ内でネットワークやリソースが共有されています。
また、「Immigrant founder」のイベントでは、アメリカで挑戦する国外の起業家たちが集まり、ビザや生き残り戦略などの知識が共有されています。
いち日本生まれの日本人が米国で挑戦していくのに、こういうコミュニティの存在は大変有難いなと感じています。
さいごに
ニューヨークには多くの日本人が住んでいますが、起業家として活動する日本人に出会う機会は非常に少ないです。
ニューヨークはテック、スタートアップもかなりアツいので、是非こちらの記事をきっかけに現地で一緒に挑戦できる人が増えたら嬉しい限りです。
僕らの会社では、ウェアラブル端末等から取得される生体データを活用して、個々人の生産性の高い/低い時間を計算、より良いスケジュールを提案できるカレンダーアプリ「Lifestack」を提供しています。まだまだアーリーステージで、プロダクトはベータ段階ですが、参加したイベントで既存ユーザーに偶然出会うこともあったりなど、ウェアラブル所有者やフィットネス・健康志向の多いニューヨークとの相性の良さを感じています。
僕らはニューヨークを中心に、ヘルステック(&ニューロテック)に貼っているので、是非その面でも応援頂けると嬉しいです!