小説【268字】影猫の街
『影猫の街』
都心の雑踏。私は猫を追いかけていた。
黒猫……だが、よく見ると影のようにも感じる。
路地を曲がると、そこは見知らぬ街。
建物は同じ。人々の姿も変わらない。
けれど、皆が影のような猫を連れている。
私以外の全員が……違和感に包まれる。
ふと自分の影を見ると、そこにも猫。
恐る恐る手を伸ばすと、影から飛び出した。
黒猫は私の腕に乗り、目を合わせた。
その瞬間、街が溶け出す。
影の猫たちが人々を飲み込んでいく。
目を閉じて開くと、元の街。
だが、腕には確かに猫がいた。
これは夢か現実か。
私は誰で、この猫は何者なのか。
謎を解くため、再び街を歩き始める。