小説【626字】蝉時雨の時
蝉時雨の時
私は、公園の片隅に座っていた。蝉の声が耳に響く中、読んでいたミステリー小説に没頭していた。
ふと、水の音が聞こえた。噴水の音かと思ったが、周囲を見回してもそれらしいものは見当たらない。
心の中で謎が膨らんでいく。好奇心が抑えられず、音の出所を探ることにした。音を追いかけ、公園の奥へと進む。
そこで、古びた小さな池を見つけた。水は澄んでいて、まるで時間が止まっているかのように静かだった。
池のほとりに腰を下ろし、私は自分の思考に浸った。なぜこんな場所に、こんなに美しい池があるのか。不意に池の水面が揺れ、何かが浮かび上がってきた。それは、一冊の古びた日記帳だった。
手に取ると、そこには見知らぬ名前とともに、日常の出来事が淡々と記されていた。しかし、最後のページには意味深な言葉が綴られていた。
「ここに辿り着いたあなたへ。この日記を見つけたのは運命です。真実は水の中に」
心臓が高鳴る。これはただの偶然ではないと確信した。池の中を再び覗き込むと、何かが光って見えた。手を伸ばし、そこから取り出したのは古い鍵だった。
一体この鍵は何の鍵なのか。そして、この日記の持ち主は誰なのか。私は新たな謎を手にし、さらなる冒険へと誘われていった。だが、真の驚きはここからだった。その日記の最後のページに……私の名前が記されていたのだ。
全てが繋がっていたことに気づいた瞬間、私の心は新たな決意で満たされた。私はこの謎を解き明かすために、全てを捧げる覚悟を決めた。