小説【246字】杢の瞳
『杢の瞳』
私は本棚から一冊を手に取った。
タイトルは『杢の瞳』となっていた。
開くと、そこには見覚えのある風景。
都心の雑踏。だが、何かが違う。
人々の目が、みな杢色に輝いていた。
不思議に思いながらページをめくる。
するとそこに、杢色の瞳をした私が。
慌てて鏡を見る。瞳は普通だ。
だが、目を閉じて開くと、杢色に。
驚いて本を閉じれば、元に戻る。
恐る恐る外へ。人々の目は普通だった。
だが、一瞬だけ杢色に輝いたような。
私は誰なのか。これは現実か夢か。
瞳の色が映す、もう一つの世界。
真実を知るため、再び本を開く。