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【SSS:939字】透明な渇き

透明な渇き

 ある日の街中、空に奇妙な水滴が現れた——

 私は本を読むのが好きだ。特にミステリー小説に夢中になる。謎解きの過程で、頭の中で様々な可能性を巡らせるのが楽しい。そんな日常の中、ある晴れた日の午後、都心の雑踏を歩いていた時のことだった。

 突然、周囲の人々が立ち止まり、空を見上げ始めた。私も釣られて顔を上げると、驚くべき光景が広がっていた。空に、巨大な水滴のような物体が浮かんでいたのだ。まるで地球規模の水玉模様のように、いくつもの透明な球体が空を覆っていた。
人々は騒然となり、中には恐れおののく者もいた。しかし私は、この不思議な現象に心を奪われた。水滴は、ゆっくりと形を変えながら地上に近づいてきた。その姿は、まるで生命を持つかのようだった。
 私は無意識のうちに、カメラを取り出していた。シャッターを切る度に、水滴の姿が変化していく様子が記録されていく。それは美しくもあり、不気味でもあった。

 そして、予想もしなかった事態が起きた。水滴の一つが、私のすぐ近くまで降りてきたのだ。それは、まるで私に何かを伝えようとしているかのようだった。恐る恐る手を伸ばすと、水滴は私の指先に触れた。
 その瞬間、私の意識は水滴の中へと吸い込まれた。そこで目にしたのは、想像を絶する光景だった。無数の映像が流れ、それは地球の未来を映し出していた。干ばつに苦しむ大地、枯れ果てた森林、干上がった河川。そして、水を求めてさまよう人々の姿。
 私は息を呑んだ。これは警告なのだと理解した。人類の行く末を示す、未来からのメッセージ。水という物質が、異変を伝えるために姿を変えて現れたのだ。

 意識が現実世界に戻ったとき、私の周りには誰もいなかった。空を見上げると、水滴の姿も消えていた。カメラには何も映っていない。まるで全てが幻だったかのように。
 しかし、私の中に残された使命感は確かなものだった。この体験を、何らかの形で世界に伝えなければならない。それが、未来を変える鍵になるかもしれない。

 家に帰り、パンを頬張りながら考えた。この物語を小説にしよう。フィクションという形を借りて、真実を伝える。それが、私にできる最善の方法だと。

 ペンを取り、書き始める……

 ある日の街中、空に奇妙な水滴が現れた——

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