小説【313字】蒼光の記憶
『蒼光の記憶』
都心の雑踏で、私は足を止めた。
目の前で、蒼い光が一瞬煌めいたような。
その日から街に、深く青い色の蒼い光が見え始めた。
建物の隙間、人々の影に、微かに蠢く蒼い輝き。
ある夜、鏡を覗くと、瞳に蒼い光が宿っていた。
その瞬間、記憶の氾濫が始まった。
見知らぬ風景、聞いたことのない言葉。
それは私のもの、でも私のものではない。
蒼い光に導かれ、知らぬ間に歩いていた。
気づけば、無数の私が佇む広間に立っていた。
「目覚めの時」声がする。
「本当の記憶を取り戻すのよ」
私は誰なのか。これは現実か、蒼い光の幻か。
……忘却か、覚醒か。
真実を求め、蒼い光に手を伸ばす。
その瞬間、全てが蒼く染まり、目が覚めた。
枕元には、蒼く光る不思議な鍵が……。