小説【300字】磁気の檻
『磁気の檻』
私は目覚めた。見知らぬ部屋。
窓から見える都心の風景は、逆さまだった。
動こうとして気づく。体が宙に浮いている。
足元には、巨大な磁石のような装置。
扉が開き、白衣の人が入ってきた。
「実験は順調です」と、誰かに告げる。
私は叫ぶ。だが、声が出ない。
目を閉じて開くと、そこは自室。夢?
安堵のため息。だが、体が軽い。
鏡を見ると、髪が逆立っていた。
部屋を出ると、全てが宙に浮いていた。
人々は平然と歩いている。私だけおかしいのか。
街を彷徨う。磁力に引き寄せられるように。
そして辿り着いた先に、あの白衣の人。
「お帰りなさい」その声に、記憶が蘇る。
私は誰なのか。これは現実か実験か。
真実を求め、再び目を閉じる。