小説【505字】瞬きの真実
瞬きの真実
私は窓際の椅子に腰掛け、雨音に耳を傾けていた。古びた一軒家で一人、本を読みふける至福の時間。
突然、携帯電話の着信音が鳴った。
「もしもし」
受話器の向こうは、祖母の声。
「今すぐ来てほしいの」
切迫した調子に、私は本を閉じた。
祖母の家に着くと、そこは不気味なほどの静寂に包まれていた。
「おばあちゃん」
呼びかけても返事はない。居間のドアを開けると、祖母の姿が目に入った。椅子に座ったまま、目を閉じている。
「おばあちゃん……」
声をかけても反応がない。私は恐る恐る近づいた。
その時、轟音と共に閃光が走った。雷鳴。そして、停電。一瞬の暗闇の後、非常灯が灯る。私は目を凝らした。
祖母の姿が消えていた。その代わり椅子の上に一枚の写真があった。若かりし日の祖母と、見知らぬ男性が映っていた。
裏返すと……『真実は、瞬きの中に』
私は慌てて目を閉じた。そして開いた瞬間、世界が一変した。
私は祖母の若かりし日の姿で、見知らぬ男性と向かい合っていた。男性は口を開く。
「君に、未来を託す」
再び目を閉じる。開くと、元の世界。しかし、私の手には一冊の本。タイトルは『未来への鍵』
私は震える手でページをめくった。