小説【291字】瞬きの間の真実
『瞬きの間の真実』
私は目を閉じた。一瞬の暗闇。
再び開いた瞬間、世界が一変していた。
都心の雑踏は消え、静寂が支配する。
建物は朽ち果て、瓦礫の山と化す。
災害の爪痕か。それとも……。
懐中電灯を取り出し、足元を照らす。
暗闇の中、何かが光る。拾い上げると、一枚の写真。
そこには笑顔の私。だが、見覚えのない場所で。
記憶にない笑顔。知らない風景。
私は誰なのか。ここは何処なのか。
そして、なぜ私はここにいるのか。
真実を求め歩き出す私。
だが、一歩踏み出した瞬間、再び目の前が暗転する。
目を開けると、そこは元の街。
変わり果てた光景は幻だったのか。
だが、握りしめた手の中。
あの写真が、確かにそこにあった。