小説【525字】気圧の罠
気圧の罠
都心の古書店で見つけた一冊の本。表紙には『空気圧の秘密』と記されていた。好奇心に駆られ、購入する。
帰宅後、ページをめくると奇妙な図表が目に飛び込んでくる。気圧の変化と人間の行動の相関関係を示すグラフ。そこには信じがたい仮説が記されていた。
「気圧操作により、人々の思考と行動を制御できる」
荒唐無稽な話だと笑い飛ばそうとした矢先、部屋の空気が変わった。
息苦しさを感じ、窓を開けようとするが体が思うように動かない。頭がぼんやりとし、意識が遠のいていく。
目覚めると、そこは見知らぬ研究所だった。白衣の男たちに囲まれ、私は実験台に横たわっていた。
「気圧制御実験、被験者Eに対する効果確認」
冷たい声が響く。恐怖に震える私。しかし、その瞬間、不思議な落ち着きが訪れた。
「あなたたちの実験は、もう終わりよ」
私の声に、男たちが驚きの表情を浮かべる。
気圧を操る能力は、私にも備わっていた。本を読んだ瞬間から、潜在能力が目覚めていたのだ。
部屋の空気が激しく揺れ動く。男たちが苦しそうに床に倒れこむ。
扉を開け、外に出る。そこには想像を超える世界が広がっていた。これは現実なのか、それとも誰かの作り上げた物語なのか。
答えを求め、私は未知なる世界へ一歩を踏み出した。