小説【255字】霧の向こうの私
『霧の向こうの私』
都心の夜。突如の濃霧。
フォグランプの光が宙を舞う。
それは私を誘うかのよう。
好奇心に駆られ追いかける。
霧の中、景色が歪む。
辿り着いたのは廃工場。
そこで見たのは、もう一人の私。
「私は誰? あなたは誰?」
問いかけると、彼女は消える。
代わりに現れる無数の私。
皆、異なる人生を歩んでいる。
「本当の私はどれ?」
その時、全てのフォグランプが一斉に明滅。
目眩とともに意識が遠のく。
目覚めると元の街角。
手には一冊の日記。
開くと、そこには未来の私の姿。
最後のページには……『全ての可能性が現実。選ぶのは、あなた』