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車中泊旅行の長所と短所

車中泊で旅をしていると、良いことも悪いこともある。それについてちょっと考えてみようと思う。もっとも、私とかみさんで車中泊旅行に出掛けた経験は、最長でも5泊6日ぐらいであるので、まあそれくらいの旅の話だと思ってもらいたい。

また、うちの車は低年式車とはいえ、いちおうキャンピングカーであるので、身長168cm以下の私とかみさんなら、車内で立つこともできる。これができるかどうかは、快適性に大きな差がある。換気扇やサブバッテリーも備わっており、それらがない車とは使い勝手も違う。

こうした「車中泊」との比較の対象のひとつは、私の場合、ソロで行う「自転車の旅」である。こちらのほうも最長で6泊7日ぐらいの経験しかないから、まあ時間軸での長さは同じようなものである。もうひとつの対象は、「車の旅」である。車で移動して、旅館やホテルに泊まるという旅だ。

まず車中泊のメリットから考えてみると、第一に旅の費用を大きく抑えることができるという点だ。車中泊でなく宿やホテルやフェリーに泊まる車の旅も(自転車を荷台に2台積んでいた)、かみさんと二人で9泊10日というのをやったことがあるが、このときは平均して1日あたり3~4万円かかった。ツインで部屋をとると、だいたい2万円近くかかるし、安宿でも1.5万円以上はかかる。

車中泊では、道の駅や無料の駐車場などを使う場合、基本的に宿泊費というものはかからない。キャンプ場に泊まるといくらかはかかるが、安いところなら車中泊1台2000円ぐらいのところもあり、RVパークのようにもっとかかるところでも、せいぜい5000円くらいのものだろう。旅の基本的費用は、交通費と宿泊費、食事費であるから、宿泊費が安く済むのはメリットが大きい。

第二に車中泊の便利な点は、多くの場合予約が不要で、時間の自由がきくことである。車に自転車を積んで旅をしていた頃は、移動に時間がかかって、目的地の宿に着いたらもう24時頃だったなんてこともある。ほとんど寝るだけのために、安くもない宿泊料を払うのはいささか辛い。車中泊は、一定の条件を満たしているところなら、どこでも泊まれるから、早く着きすぎて時間が無駄になるということもない。次の泊地まで走れば良いし、朝だってすぐに行動に移れる。

だいたい車の旅で何泊もする場合は、数日先の行動予定まで計画しきれないだろう。北海道9泊10日の旅を車でかみさんとやったときも、泊るところはその日の昼過ぎに電話して予約していた。車中泊ではRVパークや一部のキャンプ場のように予約が必要な場合もあるが、そういうところでなければ、基本予約は不要なのだ。夜中に大距離を移動しているときも、疲れてきたら道の駅やサービスエリアなどで眠ればいいだけである。

第三に車中泊の長所は、食事の費用を抑えられるという点にもある。旅というものにその土地の自慢の料理や美食を求める人には関係のない話であるが、食事に大きな費用をかけるよりも見聞を広めることにカネを使いたいと思っている人には無視できない要素である。

特にビジネスホテルなどに泊まる場合、当然だが食事は宿代と別途になる。近くにリーズナブルなファミレスなどがあれば話は別だが、旅先での食事は費用がかさむことが多い。かといって、コンビニ弁当を部屋で食べるのはちょっと寂しい。キャンピングカーなら、そんなことはないのだ。ちゃんとしたダイネット・テーブルが付いているキャブコンならいちばんいいが、うちの車のようなバンコンでも、車内で気楽に弁当類を食べることができるし、場所にもよるがリアゲートを開けて、荷台で簡単な調理をすることもできる。キャンプ場に泊まれば、もっと食事も自由になる。ただし片付けの手間も増えるけどね。

で、次は車中泊のデメリットである。いいことばかりではないのだ。

車中泊旅行の短所の第一は、泊地の選定に気を使わなければならないということだ。一般的には道の駅などが言われる場合が多いが、これがけっこう問題ありで、なかには「車中泊禁止」としているところがあったりするから、そういうところは論外であるが、ふつうのところでも必ずしも道の駅は快適ではない。

夜通し車の出入りがあったりするのももっともだが、気になるのは一晩中アイドリングしている大型トラックも少なくないという点だ。空気も悪くなるだろう。また高速のサービスエリアは本来車中泊場所とては推奨されていないだけでなく、交通量の多い路線の場合は、走行音やエンジン音がうるさい。

私たちが好むのは、きれいなトイレと無料駐車スペースのあるローカル線の無人駅や、同じようにトイレと無料駐車場がある公民館横の広場などである。連泊するのは気が引けるが、1泊ぐらいなら文句を言われることもない。ただし、そういうところは、「車中泊のおすすめスポット」みたいなウエブサイトにも出ていないから、自分で探さなくてはならない。

治安の問題も重要で、周囲に人家があるくらいのところが望ましいだろう。夜になると真っ暗になるところも良くない。街灯があるところのほうがいい。極端に静かなところは私は避けるようにしている。下手をするとトイレに起きた時にイノシシやクマに出会わないとも限らない。

ちゃんと経営者にことわった上で、コンビニの駐車場の隅に停めさせてもらうというベテランもいた。それも有用な一方法だと思うが、私は真夜中にコンビニに出入りする人々があまり好きにはなれないので、この方法を試してみたことはない。

車中泊の短所の第二は、特に食事を車内でとったりする場合に顕著だが、ゴミが溜まるという点である。旅慣れたキャンピングカーには、車体後部にプラの大きなボックスを積んでいる場合がしばしばあるけれど、あれはゴミを車外にキープするための仕掛けなのである。私たちも2023年に5泊したときは、けっこうな量の生ごみが溜まり、苦慮したのであった。キャンプ場やRVパークで処理してもらうこともできるとはいうものの、旅程にそういう泊地を入れられるかどうかは微妙であったりする。

車中泊の代表的なデメリットの第三は、「地元の人と交流しにくいこと」である。実はこれがいちばんの欠点なのかもしれない。自転車での一人旅を良くやっていた頃は、泊った小さな宿のおかみさんと世間話をしたり、道を尋ねて地元の人とあれこれ話をすることなどが常態化していたし、またそれが愉しかった。

車中泊ではそういう機会は少ない。キャンプ場やRVパークで隣り合わせた人と歓談したことは何回かあったが、地元の人と知り合うというのとはちょっと違う。決定的なのは、宿泊場所を自分で運んでいくからなのであって、これはどうしようもないことなのだが、これによって旅の面白さの重要な部分を失っていることもまた否めない。

そういうわけで、車中泊にはメリットもあれば、デメリットもある。自由に宿泊できるので、遠くへ足を伸ばすこともできるが、帰路は運転して帰ってこなければならぬ。新幹線輪行でささっと帰路につくような自転車旅のようなわけにはいかない。

書き忘れたが、断熱性の高い居住モジュールを備えたキャブコン(キャブコンバージョン)とは異なり、バンコン(バンコンバージョン)の場合、真夏でなくとも日中の車内はかなり暑くなるから、同じ場所に滞在するのは向かないということもある。ま、走ればいいんだけど。走ればサブバッテリーも充電されるしね。

でもまあ総じて、車体価格を別にすれば、車中泊旅行はリーズナブルに行える。特に二人ぐらいの場合、バランスが良いだろう。注意点は、車体の大きさで旅のできる人員数は決まってしまうことで、軽四クラスなら1名、2000ccクラス(うちのはこれ)なら2名、3名以上はキャブコンというのがひとつの目安と言えると思う。

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白鳥和也/自転車文学研究室
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