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小さな丘の周りの路地

小さな丘が連なる土地の中には静かな路地が通じている。
幼少期に駆け回ったその道は、今見ると狭苦しいくらいだが、当時はそうは思えなかった。

路地からはより細い路地が生え、それが秘密めいた土地の高まりに向かっていた。
その先を上り詰める勇気は幼い私にはなかった。

路地の傍らの溝にはイトミミズが住んでいた。
夏になるとセミの合唱が周囲から聞こえてきた。

祖父母の家は丘に食い込むようにして立っていた。
さながらそれは大昔からそこにあるような家に思えた。

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白鳥和也/自転車文学研究室
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