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海へ行って火を焚いた

海岸に出掛けてネイチャーストーブを使ってきた。雨がぽつりぽつり降り出そうとしていた。辺りには誰もいなかった。

庭で切った木の枝が枯れたものと、海岸で拾った小さな流木を燃やした。紙切れ1枚で火が付いた。

木の燃える匂いがかぐわしかった。湯を沸かすわけでもないし、調理するわけでもない。ただ、火を燃やすためだけにストーブを使った。

何かの儀式のようだと思ったが、何かを唱えたわけではない。私は黙って小枝をストーブにくべ続けただけだ。

中学生の頃にも浜で焚火をしたことがあった。アルミ箔にくるんで、芋を焼いた。

人間は大人になどならない。そのときの年齢はそのとき初めてなるものだから、慣れようがないのだ。

慣れようがないことが死ぬまで続く。それが生きるということなのかもしれない。

私は火を焚いた。一人で、雨の降りだしそうな海岸の波打ち際で。

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白鳥和也/自転車文学研究室
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