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古墳とオカリナ

きのう9月24日はよく晴れた涼しい秋の日だった。われわれ夫婦は市内の近場に鳥見に出掛けようと思い、まずは午後2時頃に日本平山頂に向かった。ところが、ここが凄い人出。とても鳥たちの集まってくるような雰囲気ではない。

夢テラスとその周辺を散歩しただけで早々と鳥見は諦め、次の目的地に向かった。その途中も道は混んでいる。スタジアムでサッカーの試合があったためだ。

やれやれという感じで辿り着いたのは、市内平野部の北端付近に位置する「三池平古墳」。ところが、ここでも駐車場に車を入れようとしたら満杯で、奥のほうにあるナショナルトレーニングセンター駐車場のほうを案内される。どうやら「三池平古墳まつり」をやっているらしい。

こりゃあもう今日は鳥見はダメだなと諦めて、気に入った場所でもある三池平古墳のおまつりを見ることに方針転換した。それでも眺めのいい場所なので、双眼鏡だけは二人とも手にしている。

古墳のところに歩いて行く途中で、ハワイアンの服装に着飾った子供たちと出会う。なるほど、そういう出し物もやったところなんだなということがわかる。

キッチンカーなどで軽食類の出店もあった。あとで自家製パンのサンドを買ったら美味しかった。

古墳は前方後円墳なので、「円」に当たる一番高いところに石室の跡があり、「方」のところはテニスコート一面くらいの広さの芝生広場になっている。そこに仮設ステージが設けられている。眺めの良いところなのだ。標高は50mくらいあり、市街地や港の方角を遠望できる。

観客席は芝生の上にブルーシートを敷いたスペース。すでに数十名が集まり、ステージ上では地元のアマチュアおじさんフォークバンドが演奏を開始していた。ブルーシートの傍らでしばらくそれを聞く。時折風が吹いてきて、譜面台とかが飛ばされそうになるので大変だ。ここは風の丘でもある。

おじさんフォークバンドの演奏が終わると、次はビンゴ大会だ。これも無料参加できるので、係の人がカードを配っていた。われわれも1枚ずつもらう。いつもくじ運の良いかみさんが「ビンゴ!」となって、17等賞を頂戴した。

ビンゴ大会が終わる頃には、夕暮れが近づいてきた。軽い服装で来てしまったが、ウインドブレーカーか長袖がほしいくらいの気温になってきた。

次にステージに上がったのは、オカリナとテナーサックスのプロ、長谷川孝二氏。だいぶ涼しくなってきたので、観衆はだいぶ減ってしまったけれど、これが期待以上の素晴らしいミニライブだった。

まず演奏されたのは、オカリナ単旋律のオリジナル曲。四国遍路でインスパイアされた曲らしいが、暮色を増してゆくなかでのその曲は、さながら異世界の古楽のようで、古代のオーラを感じるこの古墳の丘の時空とあまりに調和していた。とても不思議な感興が辺りに広がった。

夕刻の古墳の丘にオカリナの音色が響く。

続いての曲は、チェロ奏者のパブロ・カザルスが取り上げて有名になった、カタロニア民謡の「鳥の歌」。この曲も、長谷川氏によるアレンジが素晴らしく、単旋律の曲でここまで深い感動を呼び起こすことができるのかと感嘆しながらわれわれは聴いていた。

西の空の色がグラデーションを描き、鳥の影が上空を舞っていた。周囲の環境とこれほどまでに見事に交響しているライブもめったにあるもんじゃない。こういう感動を味わったのは、もう15年前ぐらいに羽衣の松のところで見た薪能以来のことだった。

ミニライブはもう一演目あり、最後まで聴きたかったものの、薄着でだいぶ寒くなってきたこともあり、途中でわれわれは辞した。

あとで調べると、昨年2022年も9月24日に予定されていたが一旦延期となって、11月に庵原の生涯学習交流館で開催されたらしい。ちょうど大雨でけっこうな被害が出て、市内の大半が断水になった日でもあったのだ。無理もない。

今年は開催できて良かった。ステージの全部は見ていないが、ミニライブを中心に素晴らしい内容であった。「三池平古墳まつり実行委員会」の方々と演奏された長谷川孝二氏などに感謝申し上げる。来年もぜひ開催して欲しい。

テナーサックスのソロも聴かせてくれた長谷川孝二氏。こちらもクールだった。ジャズをベースに広く深い音楽性を備えたアーチストであるように感じられた。
仮設ステージと大会本部。遠くに見えるのは清水港と市街地の明かり。秋の日暮れは早かった。


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