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プロター・1/9ビアンキ

プロターはイタリアの模型会社である。しばしば「プロターの奇妙な情熱」と表現されるような、モデリングに関するすさまじいまでの執念というか、マニアックぶりというか、そういう風に言われるものがある。

下の画像はプロターの「Bianchi Camp.Italiano 1980」の箱である。プロターは特にモト=オートバイのプラモデルで有名であるが、自転車も作っていたのであった。製品としてはたぶん1980年代の前半くらいに生産されていたものであろう。

だからこのキットはすでに約40年が経過しているのである。40年経ったプラスチックがどのようになっているかは想像を絶することでもあろう。ちなみにリムはもう完全にベロンベロンに曲がっており、組み立ては不能であることに間違いはない。

いったいなぜかは分からないが、CWはカンパ・レコードだけではなく、ほかのものもランナーに付属している。組立図を見ると、使わない部品にはペケが加えられており、全部で26点もの部品が不要となっている。ほかのモデルと部品を共通化しているのかもしれない。

組立図がまたえらくアバウトで、説明文はわずか。テクニカルライターのギャラを払うのが惜しかったのかどうか知らぬが、「見りゃ分かるでしょ」と言った暢気ぶり。イタリアン・ジョブである。

そうかと思うと、変なところに異常なこだわりがあって、例えばチェーンは数点のパーツを組み立てて張るようになっており、またそのつなぎ目に軸を通すなどのほぼ無意味なまでの組立方法を強要している。

数ミリしかない大きさのフロントディレーラーもちゃんと羽根がチェーンを挟むような構造を実現しており、そのため組立の煩雑さは比類がない。

もっとも笑えたのはサドルである。ワイヤー部とシート部分が別体になっており、プラスチック製のワイヤー部にゴム製のシート部をかぶせるようになっている。日本のメーカーなら絶対にやらないような構成である。


ペダル関係も馬鹿馬鹿しくなるくらい実物の構造に忠実で、トゥクリップは曲げるようになっており、またそこにストラップを通すように図解されている。マジか。

極めつけはフレームである。金属製のパーツになっているのである。ロストワックスか何かはよく知らんが、鋳物っぽい質感である。メタルの重量感を出したかったのかもしれないが、重くてかえってスケール感を損なう感じなのだ。

塗装の色指定に至っては、ビアンキ特有のチェレステカラーを出すのに、「グリーン1に対しライトブルー2」と指定するアバウトぶり。もう参りましたとしか言いようがない。

というわけで、今後もこのキットを組む予定はない。自転車の先輩から頂戴したのはもう20年ぐらい前になると思うが、これからもこのキットは笑いを誘うネタとして存在し続け、私がくたばったあとはどうなるか分からない。


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