新様式のキャンプ
今回のキャンプでは新様式のキャンプサイトがよく目についた。いわゆる「ソロキャンプ」のサイトなのだ。
どういう具合かと言うと、長方形のテント(パップテントとか言うらしい)を背景に、中央にソロキャンパーが椅子に腰かけ、その周りに焚火台やテーブルやキャンプ道具を吊るすハンガーを置いている感じなのだ。
つまり店開きをしている感じなのである。お祭りの縁日に出る店ともちょっと似ている。通りに向かって劇場的に開いている雰囲気である。
われわれがやっているようなありきたりのキャンプサイトでは、そういう劇場的な方向性はない。テーブルがあって、その周りにチェアがあるのが普通だから、店というよりは、リビングダイニングである。
今日びのソロタイプのサイトには、はっきりと「見せる」方向があり、テントは戦国の陣地で言うところの陣幕のような役割も果たしている。布状のものを巡らすことによって、単なる野営地ではなく、舞台装置化された空間を演出しているのだ。
しかし、どうも、これは、何かに似ているような気がするな、と考えていたら、はたと思い当たった。
なにかの乗り物のコックピットに似ているような気もするが、それ以上に、全体が「スマホ」的なのである。
長方形のような領土に機能が集約されていて、スマホもそうであるように、それを操作する人員(乗員)は基本的に一人だ。
ハンガーにずらりと吊るされた道具類は、スマホの中に格納されたさまざまなアプリを連想させる。
ソロキャンプだからと言って、交流を拒んでいるわけではない。むしろ最近ではソロキャンパーが集まってグループ化する方向に進んでいるみたいだし。
そういう場合、ソロキャンパーは誰と対峙しているのだろうか。自分と同じように店を広げている仲間なのか、それとも通りがかりの私のような平凡なキャンパーなのか。
ひとつ言えることは、キャンプはまた時代の縮図でもあるということだ。スマホのような情報機器と今日びのソロキャンプサイトのあいだに何か共通項があるとすれば、それは野外とはあまり関係のないものなのかもしれないのだ。
スマホで同じゲームをやっている仲間たちがふと集まっている光景に、ソロキャンプの「店」の連なりは似ているのかもしれない。孤立しながら連携していたいというような、何か本源的な欲求にシンクロしているからこそ、今のキャンプ様式が流行っているのだろう。