【読書録】『とんでもなく役に立つ数学』
今回読了した本は、
『とんでもなく役に立つ数学』
著:西成活裕
著者は、数理物理学・渋滞学を専門とする研究者。
この本は、著者が、高校生向けに行なった「数学の授業」を書籍化したものである。
数学って、社会に役立つの?
数学・国語・理科・社会・英語などなど。
学校で学ぶ教科は多数あるけど、「実社会で使われている姿」を一番想像しにくいのは、数学だと思う。
「数学は、社会に必要ない」とは思わない。
それどころか、社会を支える大事な学問だと思っている。
でも、中学・高校と6年間学んできた数学が、どう社会に活用されているのか、具体的にイメージできない。
そんなモヤモヤを抱える人にピッタリなのが、この本だ。
数学で、渋滞を解明する
著者西成教授は、数学で社会問題を解決しようと研究をされている方だ。
代表的な研究に「渋滞学」がある。
長年、渋滞は料金所・坂・カーブなど環境的なもの、事故など突発的なものが原因だと考えられてきた。
しかし、これらの原因がない場合でも、渋滞は起こっている。
なぜ何もないところで渋滞が起こるのか。
誰も説明できなかったそのメカニズムを、数学を使って解明したのが、西成教授だ。
教授は、車の渋滞を数学的に分析し、渋滞の原因は「車間距離が短すぎること」だと突き止めた。
車間距離が短すぎると、前の車が減速した際に後ろの車もブレーキを踏むことになる。
後ろも、そのまた後ろも、と次々にブレーキが踏まれることで、後続の車間距離はどんどん短くなる。
車間距離が短くなれば、減速せざるを得なくなり、ついには渋滞が発生するという。
逆に言えば、適切な車間距離があれば、前の車が急に減速してもブレーキを踏む必要がない。
ブレーキの連鎖による渋滞も、発生しない。
この考え方は、実験でも確かめられているという。
車の流れという不規則なものも、緻密な観察と数学的分析によって、法則を見つけ出すことができるという実例だ。
数学的に考えるとは?
この本の4章では、実際の問題を数学的に分析する流れを追体験できる。
どうやって、現実の現象を数学に落とし込むのか。
そのくだりを読んで、私は初めて数学を「使う」感覚が本のちょっぴり理解できたような気がした。
論理を基盤としながらも、発想を柔軟に飛躍させ、検討する要素も取捨選択する。
「数学を使って考える」とはこういうことなのか、と目から鱗が落ちる思いがした。
中高生から、大学・社会人まで、幅広い年代におすすめしたい。