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十一月十三日

私は絵を描く人間ですが、自分だけの世界に浸るだけではなく、やはり世界観や表現、技法や絵柄等が好きな尊敬する絵師さん方がいらっしゃいます。
その中の一人が鏑木清方です。
今日は『鏑木清方 築地川の世界』という企画展を見てきました。

向かう先はS県にある、上原美術館。
家族の力を借りながら片道3時間。近代館に入り受付を済ませ、展示室入口の前のベンチにてちょっと一息。

展示室入口の壁には鏑木清方と築地川の簡単な説明が掛けてありました。


説明に一通り目を通し、いざ展示室へ。
室内は撮影禁止の為、模写等をして記録を取りました。

こうして目にした物や自分の感じた事、考えた事を記録に取ると、記憶に残りやすいので、オススメです。
今度散歩した時等に試してみてくださいませ。

展示室の中は薄暗く、作品達がスポットライトで照らされていました。
画集で見ていたような作品達を生で見られるという、貴重な体験が出来ました。

鏑木は日本画でありながら、西洋画のような写実さを感じさせる美人画が有名だと思います。
私は美人画も好きですが、特に鏑木の卓上芸術が好きであります。
ラフなタッチでありながら、的確に形を作るその線。デッサン力のある実力者でないと出来ないものと思っています。
今回メインである築地川も、卓上芸術には含まれぬかもしれませんが、そのようなラフなタッチで描かれた作品達が纏められた物でした。
築地川の最初のページでは、この築地川が作られるにあたった経緯が書かれています。
築地川は元々鏑木の書いた本で、それを絵にしたということなのではと思っています。
ちゃんとした経緯が知りたい方は、ここに書かれている私の考えは無視し、専門家の説明をお聞きください。
その後は、題、元の詞と思われる文、作品、で構成されたページが続きます。
最後のページまでは見れませんでしたが、美術館入口にパンフレットが置いてあり、そこに今回の築地川の解説等が書かれたものが置いてありますので、そちらから後ろの作品を知ることができます。

築地川の中でも私が好きな絵は、『作者』という絵です。
鏑木の幼き頃の姿が描かれています。
彼の描く少年の絵はとてもほのぼのしていて、それでいてどこか美しさが滲み出ていると思うのです。
鏑木の持つ美しい感性は、この絵のように幼い頃から溢れ出ていたのだろうかと思うと、凄いなぁとつい感嘆の声が口からこぼれてしまいます。


鏑木の作品はもちろん、近代館の作品を見終わり、ついでに仏教館を覗いてみました。
最近の方の作品でしょうか。綺麗な仏像が並んでいました。

総勢何体になるかも分からぬ程に展示されています。
阿形吽形に始まり、阿修羅や弁財天等の天部、七福神から菩薩や如来まで沢山居ました。
因みに私は仏教なら帝釈天推しです。
イケメンですよね。

奥の展示室も見に行き一通り見終わった所で家族がとんでもない物を発見してしまいます。
それがこちら…

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

菩薩がこんな顔をしていいのでしょうか。
今にも人を貶めんばかりに歯茎を剥き出し笑っております。
こちら、十一面観音の真後ろに付いている「暴悪大笑面」という顔だそうです。
どこからどう見ても悪役です。
調べてみたところ、この像だけでなく普通に十一面観音に付いてるようです。
恐ろしい。
顔の意味としては「悪(煩悩)を笑い飛ばす」「煩悩の愚かさに呆れ笑うしかない」等の意味を持つようです。
やはりあまりポジティブな顔とも言えないような気がします。


鏑木の作品を生で見れた感動と、暴悪大笑面を発見してしまった恐怖を胸に別の場所へ。

沼津御用邸記念公園にやって参りました。

本邸は勿論焼け落ちている為、西付属邸の中を見学させて頂きました。
本邸、西付属邸共に明治後期に建てられており、たまに飛び込む西洋らしい要素に当時らしさを感じます。
やはり明治大正昭和初期は良いですね。しみじみとしてしまいます。

順路の通りに進んで行きますが、まぁ広い。
お勝手でさえ流石御用邸の厨房、私の知る厨房とは全く違い土間ですらありません。
想像の何倍もの広さで、天井はタイル張り。天窓まであり自然光が優しく室内を照らしています。

こんな所で働けるのは余程のエリートなのでしょう。

少々飛んでこちらは謁見室。

ここで外国の将軍と明治天皇が対話をしたとか。陽の光が温かいです。
この時恐らく時刻は午後三時。
いつの時代もこの季節には、邸宅にこうして光が差し込んだのだろうかと考えると、涙もろい私の涙腺は崩壊へ一歩近づきます。

そしてこちらは玉突き部屋。所謂ビリヤード場です。今までの部屋とは打って変わって(ビリヤードだけに)完全に洋風建築となっています。

ビリヤード台には穴が無く玉の数は四つでした。奥は点数を記録する台でしょうか。
家族によれば、技や回転等を見て点数を稼ぐのではないかとのことですが、私にはビリヤードの知識はこのビリヤードという名前程度しかありませんので、正しい所は分かりません。
ただ、今までと全く違う部屋の様子に暫く目が離せませんでした。

その後も女中部屋のすぐ側に自動式電話機(これは恐らく二号?)を見つけたり、花を鑑賞しながら出口へ。

スタッフさんからたまに説明を受けたり、楽しく見学できました。

時間ギリギリになってしまったので、今度は早くに来てもう一度公園内を見て回れたらと思います。


長い長い旅路を乗り越え帰宅しました。
今日の夕飯は米と魚と汁でした。

くたくたになった体を横にし眠りにつくことを祈ろうと思います。あゝ蒲団が温かい。
今日はここまで。
おやすみなさい。

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