No.321【令和6年12月対馬市定例議会一般質問原稿『気候変動を踏まえた災害対策について』】
おはようございます。9番議員会派市民協働の脇本啓喜です。
近年気候変動は益々激しくなり、それに伴って対馬市内においても毎年のように大雨による災害が発生しており、その被害は甚大化しています。今回は、気候変動を踏まえた災害対策について、近年市内で洪水被害に遭われた複数の被災者からのヒアリングも踏まえて通告に従い質問致します。
【冒頭質問(一括質疑形式)】
⑴河川法第16条及び河川法施行令第10条に基づき、二級河川に指定された河川については、各都道府県が河川整備基本方針を策定して国土交通省に提出する義務が課されています。しかし、対馬市には45本もの二級河川が指定されていますが、わずか10河川のみしか河川整備基本方針が提出されていません。この現状について、市長の所見を求めます。
⑵近年の水害による甚大な被害を受けて、令和6年4月26日付で国土交通省水管理・国土保全局から『河川整備基本方針の変更の考え方について』が提示され、その冒頭で、以下の方針が述べられています。
「施設能力を超過する洪水が発生することを前提に、社会全体で洪水に備える水防災意識社会の再構築を一歩進め、気候変動の影響や社会状況の変化などを踏まえ、あらゆる関係者が協働して流域全体で行う、流域治水への転換を推進し、防災・減災が主流となる社会を目指す。」
ここで示された『あらゆる関係者が協働して流域全体で行う、流域治水への転換を推進』とは、流域治水のハード面強化は予算的に限界があり、それを補うために各自治体にソフト面での対応を図って欲しいとの国からのメッセージだと私は認識しています。各地区で防災面で自助・互助が十分機能するために、どのような取り組みを展開しようとしているのか市長の答弁を求めます。
【再質問(一問一答形式)】
⑴’⑵ '本市では今後も過疎化が進行し、河川整備の費用対効果は益々悪化の一途をたどります。いくら法令で河川整備基本方針の策定が義務付けられているからとは言え、予算化の目処がつかない時点で河川整備基本方針を策定する財政的、人員的余裕がないことは理解できます。冒頭質問の⑴及び⑵に対する市長の答弁を伺うと、防災の喫緊の課題は、ソフト面の対応強化、つまり①各地区における事前の避難準備に関する住民との情報共有と、②災害時のタイムリーな情報収集及び情報発信の確保であるとの私の認識とほぼ一致していると受け取らせて頂きます。
①各地区における事前の避難準備に関する住民との情報共有について3つ提案致します。市長の答弁を求めます。
a.数年前の大雨の際、佐護の深山地区や恵古地区は、長年水害に苦しめられて来たことから、何処に高齢者がお住まいで水害の予兆があれば誰が避難所に連れて行くかが予め決められているかのように避難がなされたと聞いています。自主防災組織を立ち上げることまでは、過疎化と高齢化が進む地区では困難でも、例えば区長や各地区消防団を中心に、定期的に避難訓練を実施して頂く等、市が奨励してはどうでしょうか。
b.ハザードマップの存在や、市内複数河川に定点カメラが設置されており長崎県のホームページで動画が配信されていること等、市民に防災情報のありか及びアクセス方法を周知する等、更に工夫してはどうでしょうか。
c.ハザードマップの見直し、特に土砂災害警戒区域のレベルの細分化等が必要だと思われますが、その検討は行政主体ではなく地元住民にも参画頂き実施してはどうでしょうか。
②災害時のタイムリーな情報収集及び情報発信の確保について3つ提案致します。市長の答弁を求めます。
a.対馬市公式LINEを更に防災に活用してはどうでしょうか。例えば、線状降水帯が対馬市で予測された場合防災無線とセットでLINEでアラームを発信できないでしょうか。被災者のヒアリングでは、例えアラームが空振りに終わったとしても、市がを掴んでいるなら夜中でも情報発信して頂きたいとの要望があったことを申し添えます。
b.数年前の大雨時に、Facebook対馬Tsushimaのニュースフィールドに動画を送信頂くよう呼びかけましたら、内院の消防団員さんから急激に水位が上がる様子をご投稿頂き、当時防災担当者にも現地の情報を迅速に把握して頂けたことがありました。身の安全を十分確保することを前提に現地住民から、周囲の現状を動画や写真で対馬市公式LINEに送って頂き、タイムリーな現状把握がより充実できるよう、公式LINEを双方向性への変更を検討できないでしょうか。
c.対馬市ケーブルテレビで災害情報テロップで流すとか、最新の情報をdボタンで把握できるようにする等、スマホをお持ちでない高齢者にも災害時に情報を届ける手段を検討できないでしょうか。
⑶10月開催一般会計決算審査特別委員会の市長総括質疑において、私は「DXの本来の目的は、単なるデジタル化ではなく、DX推進により本庁事務の効率化を図り、浮いた人員を振興局や行政センターに戻して現場に出向かせ、住民サービスの充実を図ることだと思うが、市長はどう思うか」と質問したところ、市長は同感である旨の答弁をなさいました。
ところが、今定例議会2日目の審議終了後に開催された議員全員協議会において、市役所の機構改革が提案されて、その中で、上県町庁舎に入居している北部建設事務所を厳原本庁舎建設部に、北地区保健センターを豊玉町庁舎の保健部に、美津島行政センターの水道業務を水道局へ集約したいとの説明がなされたようです。
この方向性は、決算委員会時の答弁と真逆です。これでは災害対応に遅れが生じることは避けられないでしょう。更に、本庁がある厳原地区以外の過疎化やそれに伴う地域力の減衰に拍車をかけることとなるでしょう。
その他にも、本庁舎のある厳原地区が地震等で壊滅的被害に遭った場合には、振興部で本部機能が担える体制を作っておく必要があり、危機管理の観点からも本庁への集約は、誤った政策だと私は思います。
本庁への職員の集約について、市長の本意を市民に向けてわかりやすくご説明ください。
⑷近年、ハザードマップの作成が各自治体で鋭意進められていますが、避難所に指定された公共施設が床上浸水の被害に遭遇する等、想定を遥かに超える被害が頻発しています。流石に、土砂災害特別警戒区域内には避難所は設置されていないようですが、土砂災害警戒区域内に設置されている避難所の見直し検討について、市長の所見を求めます。
⑸年初の能登地震では陸の孤島が多く生じる事態を目の当たりにしました。180余の集落を抱える対馬市でも、分断される集落が生じることは充分に想定され、ドローンを活用した分断された集落支援等の対応も検討すべきでしょう。南海トラフ地震発生の際は、本土も甚大な被害を被り対馬への災害支援は困難となる可能性はかなり高いでしょう。更には、空港や主要港湾が使用不能に陥り、救援物資を受け取れない事態も想定して置くべきです。最低数日間でも生き延びるための被災時用食糧の確保を図っておくべきでしょう。非常食備蓄並びに、非常食に適した農業政策の企画及び実践の必要性について市長の所見を求めます。
⑹有害鳥獣対策がままならず、森林は荒れ果てて、大雨の際には大量の土砂や木が集落に流れ込み、度々甚大な洪水を引き起こす原因となっています。また、森林の荒廃状況は加速度的に進行し、治水と同様に治山も並行して実施する必要があります。流木は漂着ごみの全体で容積比約3割を占めておりその割合は益々高まっています。余談ですが、対馬市のSDGs推進策は、リサイクルが目立っていますが、ごみを出さないことの方がより重要だと私は思います。しかし、ごみゼロアイランドを掲げる本市において、防災とごみ削減の観点からも有害鳥獣対策の強化が必要であるとの認識は市長も一致すると思われますので、答弁は不要です。
⑺国土交通省ホームページ《砂防施設の働き『砂防堰堤[えんてい]の働きについて』》によれば、砂防堰堤(砂防ダム)は、経年でダムに土砂が溜まっても防災効果があることが記載されています。
しかし、近年の大雨時に厳原桟原地区や比田勝水ヶ浦下流等砂防ダムが設置された流域で近隣地区より被害が激しかった例からも、ある程度土砂が溜まったら取り除いた方がダムの効果が向上することは明らかです。砂防ダムにある程度土砂が溜まったら取り除いてもらうよう、対馬市振興局との連携を図ってください。また、水害を助長するほど河川に土砂が堆積する前に除去してください。危険性を認識していながら、ハード面の不作為を継続することは、天災ではなく人災と非難されるやもしれません。ハード面も可能な限りの対応を図ってください。
以上で、一般質問を終わります。