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酒抜けば憚られる外食

 こちらの勝手な思い込みであるのを承知の上で、夕食を酒抜きで通すというのには違和感を感じる。

 それは、たいてい行くところが居酒屋、寿司屋、焼き鳥屋といったところで、いずれも酒と親密な関係にあるところばかりだからだ。居酒屋など、ご丁寧に酒の文字まで入っているくらいだから、酒を呑まずして居酒屋にいるというのも何かが妙だ。

 とは言え、全く顔見知りでない店なら烏龍茶やノンアルコールビールで通してもなんらおかしくないのだが、馴染みの店でお茶に手を伸ばしていると、どこか具合でも悪いのかと気遣われて困る。
 それに、店は飲み物で利益を出していることが分かっているだけに、ノンアルコールでもなんでもいいから協力したいのは山々なのだが、アルコールの入っていない飲み物というのは、一定以上は飲めなくなるので、必然的に注文が続かない。

 酒の効力は実に恐ろしいと思うのは、ワインのないフレンチやイタリアンは想像できないし、ビールのない唐揚げ、紹興酒のない酢豚もまた、盗む酒のない酒盗がごとしなのである。

 そのような理由から、夕方に外で食事をしようという気が失せてしまった。
 時折夕食を自分で用意するのが面倒になり、帰路、ふと横の路地を見ると、美味しそうな匂いと楽しそうな笑い声が聞こえてくるので、立ち寄ってみようかと店の前まで吸い寄せられるが、どうしても足が家の方に向いてしまう。

 今夜は師走の金曜日。
 冷えた体に熱燗でもと格好をつけたいが、疲労感に押し戻されて、残った麦茶をレンジでチンして晩酌に充てる家食に落ち着いてしまうのだった。

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