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【キネマ救急箱#17】tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!〜かつて30歳だった人、これから30歳を迎える全ての人へ〜

こんにちは。
ニク・ジャガスです。

今年も熱狂のうちに終わった第94回アカデミー賞授賞式。
余韻を楽しむべく、ビリー・アイリッシュの『ノー・タイム・トゥ・ダイ』を無限ループで聴いています。
(007歴代テーマ曲の中でブッチギリに暗いですよね。笑)

本日は、アカデミー賞でも注目されたNetflixオリジナル映画『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』の感想をUPします。

実在した作曲家“ジョナサン・ラーソン“の自伝的作品である本作、ミュージカルファン向けかと言われると、必ずしもそうではなく。
30歳を生きたことがある、あるいは、これから30歳を迎える全ての人の心に突き刺さる青春ムービーでした。

ちなみに私は、ガッツリと心を掴まれた派です。

分かるー泣けるー

ほとばしる才能と刹那的な青春を歌い上げるアンドリュー・ガーフィールドが素晴らしい!

アンドリュー・ガーフィールドは、本作で「主演男優賞」にもノミネートされ、「ついにオスカーを手にするか!?」と話題になりました。

正直、アンドリュー出演作品は片手で数えるしか見たことなく、どちらかというと「コケたスパイダーマン映画の主演」として映画ファンから愛され、弄られる俳優という印象がありました。

ただ、先日鑑賞した『タミー・フェイの瞳』では、金儲けに走る夫ジム・ベイカーを熱演、あのジェシカ・チャスティンに負けず劣らずな演技をするのを目の当たりにして、圧倒されてしまいました。

そのまま流れるように本作を鑑賞したところ、すっかりアンドリューのファンになってしまった次第です。

https://theriver.jp/tick-tick-boom-review/より

なんと言っても、こんなに歌唱力が高いとは思わなかった!

オープニング曲『30/90』は、90年の人生のうち30年が過ぎてしまったという焦りを歌うロック・ソング。
パワフルに歌い切る序盤から、思い切りグッと引き込まれてしまいました。

特に、ターゲットとされている身(アラサー)としては、傷口に沁み渡ります。笑

また、本作の撮影開始直前にアンドリューはお母様を癌で亡くしていたそうです。
どうしようもない深い悲しみの中、ありったけの力を注ぎ、愛溢れる傑作に至らしめたアンドリューの精神力は脅威的であり、尊敬の念しかありません

いつか必ずオスカー像を掴み取ると信じています。

https://www.cinemacafe.net/article/2022/03/26/78014.htmlより

かつて30歳だった人、そして、これから30歳を迎える全ての人に届くメッセージ

「自分は何者かになれるのか」「あの人は自分の歳で既に成功していた」

こんな感情は、誰しもが抱いたことがあるでしょう。
この映画を見ていると、そんなモヤモヤ感を晴らしてくれるのではないかという期待感に包まれます。

夢を捨てきれず、アルバイトしながら作曲に勤しむジョナサン。
役者の夢を諦め、広告会社の営業マンに転身した親友のマイケル。
元ダンサーで、ニューヨークを離れて自立しようとする彼女のスーザン。

唯一、諦めず夢に向かって挑戦を続けるジョナサンに、いつしか視聴者は自分の希望を託して「成功してくれ!」と願うようになります。

後々ブロードウェイで大成功を収めるジョナサンですが、29歳の時点では才能を評価されず、辛い言葉をぶつけられる日々。
その中で唯一、巨匠スティーブン・ソンドハイムに掛けられた「君には才能がある」という言葉を信じて、何とかやってくることが出来ました。

現実にも居ますよね。
「センスないよ」とか「やめた方がいいよ」と言ってジャッジしてくる人。

筋が通ってる分は別として、そんなもの基本的にはガヤでしかありません。
自分が尊敬できない人の批評なんて、消しゴムのカスみたいなもの。

自分の価値は自分以外の誰にも決めさせない。
そう思った先にゴールがあると教えてくれるのがジョナサンの親友、マイケルです。

本当に貴方には時間がないでしょうか?

「30歳までに成功しないといけない」
「もう僕には時間がない」

創作に8年を費やした新作ロック・ミュージックが制作されないことが決まったジョナサンは、自暴自棄になってしまいます。

そんなジョナサンに対して、親友のマイケルは辛抱強く「成功の年齢は人それぞれだ」「ジョナサン・ラーソンという才能はお前ただ1人だ」と励まし続けてくれます。

そんな好意を素直に受け取れず「もう30だし、賞味期限切れだ」と言い張るジョナサンにマイケルが放ったのは、衝撃的な一言。

「HIVの陽性反応が出た」

残された時間が本当に無かったのは、マイケルでした。

ジョナサンには、30歳を迎えても明日が来る。
「もう一回頑張ろう」と再起して、また夢に挑戦できるチャンスがある。
でもマイケルは違います。必ず明日が来るとは限らないのです。

私も含め、きっと沢山の人が「時間がない」と焦っています。
「自分の才能を生かした仕事がしたいけど、無理だろう」「本当は別にしたいことがあるけど、もう〇歳だし出来ない」などと迷い、行動をためらう人は多い。
私なんか、その代表みたいな人間です。

でも、そんな風に迷いたくても迷えない人、生きたい明日を過ごせない人がいる。
そう考えると、「30歳までに成功しなきゃ意味がない」とか「もう〇歳だから挑戦出来ない」なんて言い訳で、傷つかないための保身ではないでしょうか。

私たちには、やりたいことに挑戦できる時間があるんです。

最後、ジョナサンが『Louder than words』の中で歌います。

俺たちが目覚め、国を動かさなければ世界の塵に埋もれなぜ?と悩まされる
尊敬に値しない偉い奴らの言葉に、なぜ首を縦に振るんだ?
言葉より行動がものを言うんだ

痛い。耳が痛すぎる。笑
迷い、悩み、モジモジしている自分の背中を押されるような感覚でした。

自身の大成功を見届けることなく、35歳という若さでこの世を去ったジョナサン・ラーソン。
多くの若者と同じように夢に友情に恋に悩み、「自分に才能はあるのか?」と自問自答を続けた先、想像を超える偉業を成し遂げた姿に心が震えること、間違いなしです。


本作は、人生のモヤモヤに心地よく寄り添ってくれる、とても良い作品でした。
また節目に必ず見返そうと思います。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました😊

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