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「四度目の夏」 1
◇プロローグ
とても不思議に思っていたことがある。
癌細胞は分裂を際限なく繰り返すけれど、増殖すればそれだけ巣食ったその個体は死に近づく。そうすれば個体ごと癌も死滅するにもかかわらず、なぜこれほどに分裂し増殖を続けるのだろう。
増殖することこそが癌細胞の生命を意味するのだとすれば、同時に死にむかうとはなんなのだろう。
それとも癌細胞自体が気づいていないだけなのか。知らないだけなのか。死というものを。
ああ、気づくだの、知るだの、わたしはなにを言っているのだろう。
細胞ひとつに、そんなものがあろうはずがないのに。
心など、あろうはずがないのに。
*
2028年、世界一のアクセス数を誇る検索エンジンを運営するバーバル社が、世界中から高次人工知能搭載ロボットを公募した。
その条件は二つだけ。
人間的な、より人間的な
もう一つは
フレンドリーな、よりフレンドリーな
ただそれだけだった。
集まったAIロボットは有識者チームによってチューニングテストにかけられ、高い知能を持ち、より人間に近い運動力と意識的言動を可能にしたものを技術ごとバーバル社が2億ドルで買い取り、専売特許を取得した。
それが高次人工知能搭載ヒューマノイドマシン「アナスタシアVer.0.0」である。
そしてバーバル社は2032年AI専用のセキュリティソフト「アルチメイトブロック」を標準帯同したヒューマノイドマシンを世界同時発売した。
これが世界市場をに賑わせた「アナスタシアVer.1.0」である。
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