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【エッセイ】陰鬱で激重な映画には、しなびたポップコーンがよく似合う
ポップコーンやフライドポテトは、出来るなら作りたてで熱々のものが食べたいし、ファストフード店で意図せず出来立てが提供された時はラッキーだと思うもの。
反対に、時間が経って、しなびていたり、しっけていたりするものが出てきたら、ハズレを引いてしまったような気になってしまうものだ。
通常はそう思ってしまうのだが、時々、しなしなになって、くたびれているポップコーンが食べたくなる時がある。
それは、ポップさのかけらがなく、登場人物たちも、そして、観ている人にとっても救いがないような、暗くて、陰鬱な映画を観ている時だ。
サスペンスやミステリー、ホラー、ヒューマンドラマ、ドキュメンタリーなど、幅広いジャンルに、重くて暗い映画作品は多く存在する。
何も考えないで楽しめる、エンターテイメント性に溢れた映画も好きだが、観ている時からメンタルにくるような、観終わった後に考えさせられる、というか、考えなければいけないような気持ちになってしまうタイプの映画も両方好きだ。
どちらのタイプの映画を観るにせよ、基本的に、映画を観る時に、登場人物たちに感情移入をすることはない。
思わず感情移入してしまうこともあるし、あえて気持ちを重ねることで、よりその作品を楽しめることもあるが、基本スタンスは神の目線、客観視するようにしている。
ただ、なんとなく、観る映画のタイプによって、雰囲気は合わせたくなってしまう。
簡単なところでいうと、家でホラー映画を観るときに部屋を真っ暗にしてみるとか、アニメや特撮の映画を映画館に観に行く時に、その作品のTシャツやグッズを持っていくなどが、ここで言う雰囲気を合わせるということになる。
雰囲気を合わせることで、鑑賞する際の雑念が消えるような気がして、より集中してその作品の世界に入り込める気がするのだ。
そんな、雰囲気合わせの一つとして、映画のタイプによってドリンクやフードを選ぶことがある。
ザ・ハリウッド、アメリカ万歳のような映画を観る時は迷わずコーラを飲むし、時代劇のお供に煎餅や羊羹などの和菓子を食べる。という感じ。
これは、モットーというほど毎回やるわけではないし、やる時もそこまで考えることでもない。
パッと思いついたらやってみるくらいの雰囲気合わせではある。
そんな中、暗くて重い、陰鬱な映画に合うフードが、時間が経って、しなびているポップコーンだと思っている。
爽快感満載の、派手なアクション映画だったら、出来立てのポップコーンをバリバリと食べながら観るのもいいが、目を覆いたくなるような描写や胸が締め付けられるような場面が続く映画を観ている時には、どこか違和感があり、映画と観ている人の間が乖離していくような気がしてしまう。
その点、重暗い映画を観ながら食べるしなびたポップコーンは、歯がゆっくりと入っていく感じと、気持ちが沈む感覚が近くなり、映画との繋がりが出来て、より作品の中に入り込める気がしてしまう。
ワインと料理の組み合わせの際によく使われる、「マリアージュ」という言葉があるが、映画と料理、飲み物にもマリアージュは存在すると思っている。
青春映画を観る時は炭酸系の飲み物がよく合うし、マフィア映画にはウイスキーやワインがよく馴染む。
香港映画を観ながら食べる中華料理は格別だし、スプラッター映画を観ながら食べる挽肉料理には、不思議な魅力がある。
こんな感じで、映画を観る時に形から入るのも楽しいものだし、単に観るだけよりも、一つのミニイベントにすることが出来る。
例え、変わり映えのしない毎日だったとしても、これくらいの変化ならすぐに起こすことが出来る。
次はどんな映画と、どんな食べ物、飲み物を組み合わせようか。
こんなことを考えている時間も、映画を選ぶ時間と同じくらい好きだ。
ベストマッチする組み合わせを見つけられるのなら、出来立てのポップコーンを、あえて、くたくたにしなびさせるのも悪くない。
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